丸山眞男に憲法9条を学ぶ
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本書所収の「憲法九条をめぐる若干の考察」を読むと,「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」という日本国憲法前文の言葉が重く響いてきます。「政府の行為」によって戦争が始められ,「政府の行為」によって若者が戦場に送り出された,という歴史を繰り返さないための英知を,本書で読むことができます。憲法9条は,ほかでもない,国家権力に対する縛り(=国に戦争をさせないという制約)として存在する「国宝」?であることを確認したいところです。
この小文(研究会の報告)の中には,知る人ぞ知る「戦争絶滅請合法案」の紹介が出てきます。著者も親交が厚かった長谷川如是閑による紹介の孫引きですが,戦争が始まったら,元首や閣僚,代議士などが真っ先に戦場に赴くべしとするこの法案については,未だかつて成立した国がありません。誰が誰に戦争をさせるのか,戦争の本質を考える上で,面白い材料です。