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丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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冷静、簡潔、淡々 ★★★★☆
丸山眞男の評伝は山のように出ているが、その多くは丸山を賛美するものか酷評するものかのどちらかである。
それに対し本書は、丸山への冷静な立ち位置を保ちつつ均等に書かれた丸山論である。
その冷静な視点は、客観的な評伝にはあるべきものである。

だが、逆にいえば、冷静であり、また新書という分量に丸山のすべての仕事を盛り込もうとしたため、淡々としていて読んでいての面白さや盛り上がりに欠ける感は否めない。
その意味で、学術書としては成功だが一般向けの本として成功かは疑問が残ってしまう内容であった。
社会や政治を考えるヒントがたくさん。視野が広がります。 ★★★★★
本書は丸山眞男についての「評伝」だ。

非常に丁寧にの像を追っている印象を覚えた。

本書での丸山の像は、あくまで著者の解釈であり、本書だけで丸山の思想を理解したと思うのは早合点ではあるが

丸山自身の著書を数冊だけ読み、背景知識などもないまま解釈してしまうよりは、この本をまず読んだほうがよいと思う。

多く側面から、著者が力を注いで纏め上げた本書には、にじみ出る説得力が感じられる。


仮に、丸山の本当の考えて異なる部分があるとしても、「自由とは何か」「個人は社会にどう向き合えばいいか」など、についての鋭い示唆がたくさんある。


例えば「行動によってリベラルであることを実証するにはどういう選択をすべきなのか」という問いがある。

これに対し丸山は、ヴォルテールの【私はあなたのいうことに賛成しないが、あなたがそれをいう権利は死んでも擁護しよう】、

ローザ・ルクセンブルクの【自由というものはいつでも、他人と考えを異にする自由である】という定義でこたえたという。


現代社会は、考えが相対化され、ニヒリズムに陥りがちだと言われることがある。

また多くの人は、国家や組織のイデオロギーや常識によって、なんらかの「イメージ」の色眼鏡をかけている。

その中で適切な「政治的判断」を下すためにどうすればよいかという問題への丸山の答えも示されている。


理念だけではなく、どう行動をすれば良いかのヒントもみつかる。

・日ごろから、おたがいに顔の見える小さな集団の中で、政治や社会の問題を討議し、政治を監視すること。

・現状を、自分の側の誤りとして省みて、結果に責任をとる態度をもつこと。

・政治にベストを期待しないこと。

・古典を読み、自分自身を現代から隔離し、現代の全体像を距離を置いて観察する目を養うこと。

などなど。


丸山は、「専門家ではない人々は、そぼくで信頼できる人間、信じられる知性を見つけ、その英知と方法を学ぶことも必要」だと考えていたようだ。複雑になり、専門性が強くなってきた現代では、現実的にはそうする必要がある問題も非常に多いと思う。

本書を読んだ限りでは、丸山眞男は、理論だけ振りかざしている人間ではなく、自分の足元から物事を考えていこうとしていたように感じられた。

そんな丸山が、もしくは著者が、僕にとってそのような人間の一人であっても良いかもしれないと思った。


文系論壇の底なしの不毛さ ★★★☆☆
なんていうか、ページをめくるたびにタバコのけむりがもくもくと漂ってきそうな、そんな時代に思索に溺れていったインテリのお話です。本書を読みながら、自然科学のような基本的な足場を持たない文系論壇の底なしの不毛さを痛感せずにはいられませんでした。
卒のない評伝 ★★★★☆
本書を手に取った僕の欲望を見透かすかのように、本書は次のような著者の素朴な実感の叙述から始まる。「丸山病、とでも呼ぶべきものがあるように思う。」

そうなのだ。丸山真男の批判者の言説は、そして擁護者の言説は、ともに不可避的に加熱していく。近年では彼をひっぱたきたいとまでいってのける若者まで、出現した。彼の、そして彼の思想の何が、そのフォロアーとアンチの人々を熱狂に誘うのか。本書は、そのような世にはびこる「イメージとしての丸山真男」を一端わきにおき、主に生い立ちや戦争体験アカデミックな業績、本人の座談会などでの発言、周囲の人の彼に対する発言を元に構成したいわば、等身大の丸山真男論。

育った家は山の手でありながらその中でもはしっこの元は遊郭のあった貧民街だいう独特の生育環境、大学入学以前からドイツ語の本を原書で読んでいたなど(?)その博覧強記ぶり、逮捕拘留や一時大陸へ出兵したという戦争体験などが、後に紡ぎ出すことになる彼の思想に少なからぬ影響を与えているように、思える。

ただ、冒頭の「丸山病」なるものがあるとして、その「病原体」というのはいったいなんだったのか。それは残念ながらこの評伝を読む限りでは分からない。何故あの時代、人は丸山真男を猛烈に支持し、猛烈に批判したのか。
そこらへんはアカデミズムとジャーナリズムの間を浮遊し続けた丸山真男像を描いた、この新書の方が導きの糸になってくれるかも

丸山眞男の時代―大学・知識人・ジャーナリズム (中公新書)
丸山熱 ★★★☆☆
初めて丸山の評伝を読んだ。丸山のいくつかの作品を読んだが、把握の難しいものもあった。著者が丸山をどうさばくか期待しながら読んだ。だが、なんとなく失望させられた。
先の評伝、和辻の場合は、読ませたからである。これは和辻の方が普段からなじんでいるせいであろう。それに対し、丸山は特別に愛着のある著作がないことに起因しているかもしれない。よく知っている作家の評伝の方が読みやすいようだ。
邪推にすぎないが、苅部の全体にしめる地の文は以外に少ないのではないだろうか。ほとんど引用文でつづられた文章のように思うのは私だけだろうか。流れる文になっていない。文に著者のいきづかいが見られないのだ。また、内容にしても、新しい発見や着眼は意外とすくないのではないか。著者自身も丸山熱に距離を置くといいながら、結果において、断定的に述べることになった文章は著者の意気込みを裏切っている。
「今後、丸山についてこんなに長々と書くことは、たぶんない」と言っているが、これは、この書が失敗作であることを苅部自身が認めているのであろうか。