システム思考を本気で学ぶための人のバイブル
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以前からシステム思考には触れており、自分自身でもビジネス上で活用していたが、この本を読んで改めて「複雑な現代において、システム思考は必要不可欠なインテリジェンスだ!」という想いにいたりました。
この本で得られた大きな学びの一つは、「指数関数的な変化をはじめ、複雑なシステムの挙動を人間は、予測することが本当に苦手」ということでした。
システムの複雑な挙動を如何に理解できないかについて具体的な事例がふんだんに紹介されており、その理解を促進する上でどのようにシステム思考が活用可能なのかが具体的に描かれています。
たとえば、新車販売の促進を目的としたオートリースが、結果的に新中古車市場を活況にしてしまい、新車販売に影響を与えていたことなど、誰もが「これは、絶対にうまくいく」と思うであろう施策の中には、実は大きな罠が潜んでいることなどが、非常によくわかります。
重要な意志決定を下すポジションにある方、自分だけが先見の明があり「なんでみんな分からないんだ!」と苛立ちを感じていらっしゃる方、システム思考を元々知っていてより深く学びたい人にお勧めの一冊です。
読むのが大変だったが、読んだ後に「買ってよかった」と思えた
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正直申しあげて、読みにくい本でした。
文字が小さくて、明朝体で、ページ数が多くて、ページめくる時に紙をやぶらないように気を使って、等々。
システムシンキングを今使う必要がなくてもどこかで必ず役に立つ、そう思いながら読んでました。
各章ごとに、その章が何を取り上げているのか、章の頭の方で説明されていました。
なので、システムシンキングについて知りたい所だけを拾い読みする、そういう方法もアリかと思います。
余談ですが、この本の原書は、この翻訳者ペアが依然に共著したなぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方で参考文献として挙がっていました。
原著は1000ページ近い学術専門書です。初学者にはお薦めしません。
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システム思考とは,様々な要素の複雑なつながりを「システム」として捉え,観察対象の全体構造を俯瞰する物の見方です。訳題は「システム思考」となっていますが,原題は"Business Dynamics",本書は、システム思考の一つであるシステム・ダイナミクス(System Dynamics,以下,SD)の最古典テキストの訳本です(システム思考は一般に,在庫配分などのオペレーションズ・リサーチや、P.ChecklandのSoft System Methodologyを含みます)。
SDは,因果関係を矢印で表現することで,時間的遅れやフィードバックなどのダイナミックな構造的特性を記述する方法です。地球温暖化や自動車産業でのマーケティング戦略などが本書のように図解されると,「へぇ、なるほど」と納得しますが,実用するのは相当困難です。
1.対象の問題状況を,SDでモデル構築するのが難しい。
2.定量的な分析をするために,コンピュータ・シミュレーションが不可欠。
1については著者自身が巻末で,「初心者ではなく、熟練したモデル設計者を起用する」ことを,活用原則として挙げています。因果関係を科学的に推論したり,それに必要なストック/フローの峻別(例えば,会計における貸借対照表の項目/損益決算書の項目の関係)はなかなか難しいのです。2については,企業・行政の意思決定に活用しようとすると,定量的な予測データを出すために,コンピュータ・シミュレーションが不可欠になってきます。また,「理系と文系の両方の読者を念頭に置いた」と訳者は書かれていますが,微分積分・確率統計論などの工学的センスが,SDの理解には必要です。SDが初めての方は,システム・シンキング入門 (日経文庫)をお薦めします。