今日、我々がナチスの愚行を批判することはたやすいが、私自身が当時のドイツに産まれていたらどうだっただろう。もしかしたら独裁者ヒトラーの魅力に屈していたかもしれない。
著者のトラウデル・ユンゲが戦時中、たいした自覚も政治的意図もなくナチスの中枢で働き、結果として少なからずユダヤ人の大量虐殺に関与していたことへの苦悩は重かったことだろう。
私は彼女と同じ過ちをどこかでしていないだろうか。考えたら怖くなった。
彼女や、収容所で命を落としていったユダヤ人達にたいして哀れみを感じるだけでなく、あろうことかヒトラーにたいしても哀れみを感じてしまった。
いろいろなことを考えさせられる名著だと思う。