智慧の生き方が最勝の生き方
★★★★☆
お釈迦様は「少しの知識でも、それを実践しなさい。実践する人こそ真の知識人です」とおっしゃった。本書ではその言葉に沿うかのように薄い本ではあるが、実践可能な教えが盛り込まれている。
損得勘定について長老はこのように述べる。
「自分というものは単なる交差点に過ぎないのですから、損得に左右されて一喜一憂し、こころをかき乱すべきではないのです」(pp31-32)
損得勘定において守るべき優先順位がある。
一、人格の向上
二、人間関係
三、知識・情報
四、物
興味深いことに私たち世間では最後の「物」に最も価値を置き、「人格の向上」をおろそかにしている。物・金を優先した結果はどうだろうか。偽装問題、汚職事件だ。
さらに「与えるものは最大に、得るものは適量を」というのも真理だ。得るものに重点を置かないことによって満たされない不満が解消されるのではないか。
長老がおっしゃるように、与えること中心になると、損をしない生き方になり社会に必要とされる人間になるので、世間が放っておかなくなる。すると、競争する敵がいなくなるのだ。
第二章では、相対論が語られる。「世の中は有でも無でもなく因縁に依って一時的に成り立っている」(p107)という真理だ。ことだ。
例えば、
「智慧のある人は、人が何を言っても、いちいち怒ったり、舞い上がったり、落ち込んだりしません。相手が言う言葉に意味があるかないかを客観的に判断して、意味がある場合は、その意味を理解してそれで終わります。それ以上、何も考えたり妄想したりしません」(p101)
問題の解決法も相対的だ。起こった問題は、環境がさまざまで過去の知識に基づくのではなく、その場の智慧を使って解決しなければならないということだ。相対論を理解している人は「多角的に物事を見ることができ…物事に囚われることなく軽やかに生きることができる」(p107)
現代人の私たちの感覚からすれば、比丘たちはホームレス同然の生活を送っている。だが、
「過去に悩まず、未来を期待せず、現在に生きています。だから顔色が穏やかなのです」
「世の中のさまざまな美しいものは欲ではありません。人の考え方が欲なのです。さまざまなものは世の中に、ただそのようにあるだけであり、智慧のある人は、こころの欲を捨てるのです」
とお釈迦様はおっしゃった。善い思考をもつことがすべてだ、というのが仏教の答えである。