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貸し込み(上) (角川文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店(角川グループパブリッシング)
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裁判を通してバブル期や司法のあり方を見る ★★★★★
 以前に、文藝春秋に黒木氏が寄稿していたのを読んで、その後がどうなったか気になっていた。
 本書は、一部、名前を推測可能な別名にすることによりフィクションとしてあるが、およそノンフィクションと思って黒木氏は書いているように感じる。
 実際の場面に立ち会わないとここまで細かい描写ができないだろう。その詳細な記憶力と再現力はすばらしいと思う。

 一言で言えば、バブルに踊った東洋シティ銀行(おそらくUFJ銀行。問題を実際に作ったのは、その前身の三和銀行か?)の狼藉三昧、私利私欲をはかる銀行マンたちを、裁判を透かしてみたものである。
 「100万人を破滅させた大銀行の犯罪」なども読んで思ったが、「お客様本位」といくら言っても、目の前に積み上がるノルマの前には、被雇用者である銀行マンは、なりふり構わず「銀行本位」以外にはなりえないのだろう。
 また、印鑑の効果について呈されている疑問(押印があれば私文書は真正と見なされる点。民事訴訟法228条の4とそれを踏襲した判決)ももっともと思った。

 裁判は残念な結果に終わったようだが、金商法の「適合性の原則」(相手の能力に応じた説明責任)は、レンダー・ライアビリティとまではいかないかもしれないが、金融機関に相当の責任を負わせるものであると考えられるので、行政面での対応は進んできているように思われる。
 日本では偽証罪がほとんど成立しないので、法廷では嘘のつき得との指摘も考えさせられる。言葉の重さを重視しない国に将来はあるのだろうかとの念に打たれる。
 また、東洋シティ銀行を合併した東京扶桑FG(三菱東京FGか?)の見識(「裁判は勝てばいいってものじゃない。本件は典型的な危機管理の失敗」)に救われる。

 しかし、ここまでの悪行三昧を的確に処理できない司法のあり方にも疑問符が付くであろう。最近の法曹増員の中でも、裁判官の増員が進んでいるという話は聞いたことがない。いったいどうなっているのだろうか?

 また、最終章のプライベートバンキングに関する記述は、別の事件(クレディ・スイスの実質的なマネー・ロンダリング事件(2003))を下敷きにしているように思うが、本書の一部として欠くことができないピースとなっている。

 なお、鮫島議員は誰をモデルにしているのかは、(自分には)最後までわからなかった。
いろいろとアンバランスだが、読んで損はない。 ★★★☆☆
 これは上下巻通してのレビューです。あらすじなどは他のレビュアーの皆様がかかれている通りで、銀行が判断能力を失った資産家に金を「貸し込み」、その周囲の悪しき人たちはハイエナのように金を盗っていったことについての裁判の本です。
 まず気になるのは、資産家側の弁護士の描写が平凡なこと。主人公が好意をもっているにせよ、とにかく褒めるいっぽうでしかも同じ表現を何度も繰り返すので飽きがきます(「ぱっと花の咲くような」云々)。この弁護士は冷静に状況を判断し、裁判でクライアントが有利になるように事を進めているのですが、その手腕については会話で表されている部分が多いため、「ここでこう判断し、行動するから優秀だ」的な表現は見当たりません。この本は裁判を取り扱った本なのですから、弁護士についても褒める以外にいろいろと言及すべき事はあるのではないかと思います。
 そして、上下巻でバランスがとれていないのも気になります。上巻は裁判で主人公が証人として法廷に立つまでで、細かい話を含め一気に読み通せる勢いがあります。しかし下巻は証人喚問と、それが終わってから判決が出るまで、そして判決がでた後の後日談的な話をなんとなくだらだらと書き進めた感じです。証人喚問までは主人公が主導権を握って物事を進めていくことができていたのですが、証人喚問以降は物事がうまく進まず、主人公以外の人物が影響を与え始めます。上巻での主人公が突き進むのにのめり込むようなスピード感と異なり、下巻は割と淡々としています。ストーリー上は、下巻のほうが全ての悪巧みが明らかになっていくので面白いはずなのですが、上巻ほどのめり込むことができません。この落差はなんとかならないものかと思ってしまいました。
 苦言が続いてしまいましたが、それでもこの本はすばらしいと思います。巨大組織がどう腐っていくかという観点で見ても面白いですし、普段は知り得ない銀行の内情を知るという目的でもなかなか読みどころが多いです。もちろん裁判そのものも興味深いものですし、裁判を経験した事のあるひともない人も得るものが多い本だと思います。しかしながら、二回以上繰り返して読むことはないだろう、と思ってしまうのもまた否めない本でした。
黒木氏の著作としては微妙 ★★★☆☆
本書は著者の作品としては異色の物で、所謂国際金融ものではなく、本人の実体験に基づく
バブル期の邦銀の貸し込み事件を描いたもの。実体験が基になっているためか、主人公と
敵対する人たち(主人公の夫や、大淀銀行の人たち)が極めて悪し様に描かれており、
読後感があまり良くない。「トップ・レフト」「アジアの隼」の後、黒木氏の著作に
パワーダウンを感じるのは私だけでしょうか?

もう一点、黒木氏の著作、特に日本を舞台とした本書や「巨大投資銀行」にも感じた
事ですが、実際に登場人物が絡む組織名は仮名、それ以外の組織は実名と言うのは
違和感ありませんか?私はすごく違和感を感じました。
訴訟の実情を描ききる ★★★★★
弁護士や当事者の動きがリアルです。
弁護士、訴訟の描き方がリアルなのはよく分かるので、
きっと銀行内部の描き方も「リアル」なんだと思います。
そう思って読みました。
やはり黒木さんの小説は、何を描いても描ききっています。
下巻、まだ右近に対する反対尋問のところまでしか読んでいませんが、
裁判長が居眠り、おじさん弁護士の間抜けな反対尋問ぶりなどが
痛烈に描かれています。
面白い!
■銀行の体質がリアルに分かります。恐ろしいです■ ★★★★★
・著者自身が実際に巻き込まれた事件を題材にしているせいかリアルです。
 少しだけ読んだら寝ようと思っていたら一気に3時間で読んでしまいました。
・旧三和銀行(=現UFJ銀行)の広報や法務部は本当にびっくりしたでしょうね。
 濡れ衣を着せようとした単なる一平行員が、
 まさかブレイク寸前の作家で なおかつ
 マスコミをも使って正々堂々戦う猛者だったとは。非常に痛快です。
・この著作から
 バブル期にどれほど酷い融資が横行していたか、
 巨大銀行という組織が如何にゴミ貯めと化しているか、
 が鮮明に分かります。
 (USで起きたサブプライム融資の現場も同じようなものだったのでしょう。
  時代は過ぎて、国が違っても金融業のモラルに変わりは有りません。)
・また、日本の裁判制度の問題についても切り込まれています。
→非常に面白かったです。