【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:笹本稜平/著 出版社名:祥伝社 発行年月:2009年11月 関連キーワード:ミトウホウ チヨウヘン シヨウセツ みとうほう ちようへん しようせつ、 シヨウデンシヤ シヨウデンシヤ 3440 しようでんしや しようでんしや 3440、 シヨウデンシヤ シヨウデンシヤ 3440 しようでんしや しようでんしや 3440
貴重な山岳小説
★★☆☆☆
著者のものを読むのは『グリズリー』(2004)以来です。
こんな山登りの小説を書いているなんて知りませんでし
た。本作を読み終えてから、世評高い『還るべき場所』
(2008)を手にとりました。ヒマラヤ・ブロードピークから
の生還をめぐり、戻る側とそれを待つ側互いの焦燥感と
絶望感とが、まるで映画のカットバックのごとく交互に
書き分けられていて、思わず手に汗握る迫力がありまし
た。けだし傑作というべきでしょう。
それに比べると本作は、スケールが小さくなった感は
否めません。ただし、それを補うかのように派遣労働者、
発達・知的障害者の三人を主人公に据えて、新機軸を
出そうとしています。山に挑戦することが人生の可能性
を開くというテーマは前作と共通ながら、主人公達の世
間での生きにくさが強調された分、読後感は違ったもの
になりました。(アスペルガー症候群を病むサヤカの調
理へのこだわりは、本物志向で快いものでした。それに
しても昨年は、映画でも『南極料理人』、『のんちゃんの
り弁』などと食へのこだわりがトレンドでした。何故なん
でしょうか。)
山岳小説といえば、わたしには新田次郎や吉村昭の
ものしか思い浮かびません。しかし、それは記録小説
と呼ぶべきものでした。フィクションとしての山岳小説、
それは新境地と言ってよいと思います。著者に期待し
ています。
リアリティにかける山岳描写
★★★☆☆
前作の『還るべき場所』が面白かったので、期待して読んだのだが、残念ながら期待はずれだった。
前半はまあまあ面白い。登山を人生に見たて、山への挑戦を人生への挑戦になぞらえるモチーフはありきたりながら、それなりに読ませてはくれる。登場人物の設定もありがちながら、会話等もそれなりにリアリティを持っている。
しかし、後半の未踏峰への登山のシーンとなると、リアリティが激減する。
いくら世界トップクラスのクライマー(しかし現役を退いて30年!)の厳しいレッスンを受けたからと言って、既踏峰ならともかく、経験の乏しい素人集団があんなにも簡単に未踏峰に登れるはずはない。
高度順応もほとんどおこなっていないにもかかわらず(それまでの最高高度は富士山)、大した高山病にも悩まされていない(しかも無酸素)。
未踏峰で詳しい地図もなく、情報も乏しいにもかかわらず、経験乏しい彼らが初見で的確なルートファインディングを行って危険を避けているが、はたしてそんなことが可能なのだろうか。
結局、大した困難に出会うこともなく登り切ってしまう。(これを読んで、素人でも少し訓練を積み、ちょっと頑張れば、ヒマラヤにでも登れるのだ、などとくれぐれも勘違いしないように。)
山とはもっと危険で峻烈であるからこそ、それを登り切った喜びも大きいのである。
著者は、どの程度の実際の登山経験を持っているのだろうか。
山についてよく調べてはいるのだが、登頂の困難さや危険さといった肝心のところで、残念ながら全くリアリティを感じられない。
私は、ハイキングをたしなむ程度だが、それでも山の厳しさを経験し、実感している。
はたして本当のクライマーたちはこの小説をどう読むのであろうか、意見を聞きたいところである。
前作「還るべき場所」に比べて、迫力が少なく物足りなかった
★★★★☆
山小屋で仕事をすることになったハンデを抱える3人の若者が、山小屋の主人で元登山家の男と出会い、未踏峰の山を目指す物語。登山を通して、生きることの意味や誰かの幸せのために生きる生き方、夢や希望を持つことで人生の喜びを得ることなど、若者の成長を描いたストーリは最後まで楽しめた。
ただ、終盤の未踏峰への行程において、裕也がサヤカや慎治のことを必要以上に繰り返し褒め称える様子がくどかったし、初めての未踏峰への登攀にも関わらず、ほとんど大きな障害がなかったのもでき過ぎだと思った。著者の前作「還るべき場所」に比べて、迫力が少なく物足りなかったのが残念だった。
若者三人のヒマラヤ未踏峰への挑戦
★★★★★
それまで山とは縁のない三人の若者がある山小屋の主人を通して出会い、三人共にヒマラヤの未踏峰に登るという共通する夢を持つことになる・・・。
自分は登山を始めて一年経っていない若造だが、この本はすでに登山を始めている人は勿論だが登山を始めようとしている人にもぜひ進めたい一冊だと思う。
山に登る喜び、登りきったときの達成感、山に関わっている時のさまざまな思いを描写しているので読んでいる最中、自分がこれまで行ってきた山行を彷彿とさせてくれました。
山岳シーンの重厚さはまるで自分がその場に行って登山しているような錯覚を味わうことが出来ます。
またこの三人がいかにしてヒマラヤ未踏峰へ登る夢を持つにいたったか、そんな人間ドラマも見所です。
この本は自分にとって人生、登山の方向性を考える上での材料の一つとなってくれました。
人生とは、登山とは・・・そんなことを考えさせてくれる小説です。