女性に圧倒的な人気を誇る作家、江國香織のエッセイ集。初の男性誌連載だった「男友達の部屋」をはじめとする、最近10年間の著者いわく「『泣く大人』の記録」である。
全4章のうち「雨が世界を冷やす夜」「男友達の部屋」「ほしいもののこと」では、日々の生活のなかで、家族、友人を巻き込みながら起こるできごとを、簡潔で、潔ささえ感じる文章で書いている。ときに読者をも共感の渦の中に引き込んでしまう、そんな現実感もにおわせながら。
最後の章「日ざしの匂いの、仄暗い場所」では、著者の本にまつわる思いを、日記、レビューの形で記している。それぞれのレビューも単なる書評ではなく心に響くエッセイとなっているのは、さすがである。
約10年間という、時の流れの中での環境の変化というのは、刻一刻と姿を変える日々の生活の積み重ねであることを感じさせる。著者も、それを改めて見つめ直すことで自分自身が「泣く大人」になったことを確認している。
著者は「子供は泣かない生き物である」という視点を持ち、その視点が「泣く大人」を生みだす。「泣く大人」は実際に涙を流せる人であり「心から安心してしまえる場所」を持てた人であるという。そして本書には、そうなれたことのうれしさが、ちりばめられている。ストレスなどで、とかく無理をしがちな大人たちに「泣いてもいいんだよ」とエールを送ってくれる、いつでも手の届く所に置いておきたい本である。(望月樹子)
ヤサグレの気分で読むにはもったいない本
★★★☆☆
本を読むとき、その本の性質と自分の精神状態がピタリとあうことが大変好ましい。 この本を読んでいる時、私の気分は何故だかやさぐれていた。これはヤサグレの気分 で読むにはもったいない本である。おそらくヤサグレを治そうと、この贅沢なエッセイを読み始めたのであろうが、もったいない。この本は気持ちが落ち着いていると きに、温かいところで(あたたかいといっても夏ではない)読むのがいい。風邪気味のときに、夜ベットの中で・・・とか。残念ながら、私はイソイソと読んでしまった ので、このエッセイを楽しめなかったのでした。そのせいか前のエッセイの『泣かない子供』の方が良かったように思えてしまいました。また読もう。
すっかり大人の女性
★★★☆☆
泣かない子供 に続いて 泣く大人も読みました。
泣かない子供から5年です。
比べて読むと、受ける印象が違っています。
5年の間にやはり文章が大人になってるなぁという印象を受けました。
少女らしさがなくなってすっかり大人の女性になったなぁと感じます。
「雨が世界を冷やす夜」の章 が一番楽しめました。
「男友達の部屋」の章 は江國さん自身が厄介なテーマと書いているだけあって、
ちょっとたどたどしいです。
好きなものは好き、という姿勢
★★★☆☆
もともと、読者によって好き嫌いのはっきり別れる作家である。嫌いな人にとっては、「ほしいもののこと」の章あたりが生理的に合わないだろう。自然体でにじみ出てくるメルヘンチックな気取りは、多くの男性にとって「勘弁してよ」という肌触りを持つ。
だが、「雨が世界を冷やす夜」の透明感は出色。自分の好きなものや風物を、だれにも気兼ねせずに高らかに書き綴っている。この姿勢は、「枕草子」と同じスタンスである。この章では、エキセントリックな個性やセレブ感までも、構えることなくイヤミなくしみこんでくる。
覚えていないのです
★★★☆☆
つい2ヶ月前ほどに読んだのですが
内容については全く記憶が残っていないのです。
小説同様、独特な世界だったことは記憶していますが
やはり私は小説の方が好きみたいです。
う~~ん。
★★★☆☆
江国さんの世界が大好きな私。
でもこのエッセイではあまりあの空気に浸ることはできませんでした。
江国さんのいう贅沢とはあまり金銭的なことではなくて
時間とか心の贅沢でその部分はわかるなあと思いました。
女の子に大きくなったら男を泣かせる女になりますようにと
思うところは、自分の子供にも思ったりして・・