また、彼女が描く物語の主人公たちは、彼女自身なのだと、
改めて気づかされるような箇所が多々あります。
特に私は、彼女のお父さんの話や妹の話、それに「ラルフへ」が気に入って、
何度も読み返してみました。
自分のことやその身の回りのことを、
あんな風に透き通らせながら書けるって、
とても素敵なことのように思います。
彼女のエッセイ集は、まだこれしか読んだことがありませんが、
書店で見つけることが出来れば、
また他のエッセイも読んでみたいと思います。
恋愛や家族や食べ物や旅行や本の話、
全体的に綿で出来たような柔らかくて暖かい文体が印象的でした。
中身としては若干女性向かなと思うところもありましたが、
お茶を飲みながら読むには持って来いの話がぎゅうっと詰まってます。
中でもお勧めしたいのは、食べ物に関する項。
「うわぁ美味しそう!食べたい!!」というより、
大好物を口の中に入れた瞬間の「うはぁ幸せ…」という感覚が
じんわりと広がります。
エッセイというよりも、ショートムービーを見ているような
そんな本でした。
江国香織さんの家族にふれたエッセーはまた楽しかったです。「愛するとか愛されるとかそれはもう、それだけで一つの憎しみなのだ。」と時々、きりっとした文章もありますが、それがまたスパイシーがあって、家族に関するエッセーとしては深みがあって面白かったです。
また中盤の「読書日記」や江国香織さんの読後の何冊かのそれぞれの感想はさすがだな~と思わせつつ嫌味を感じない文体で、思わずそれらの本を自分もぜひいつか読んでみたい!とこのエッセー集を読んで、楽しく得した気分になりました。