大自然という弱肉強食の世界は、自らが生きるために他者を
殺すことが了解される世界。もし自分がその中の1匹だとしたら…
捕食側の場合、誰を食べていいのか、誰を食べちゃいけないのか
という根本的な問題に直面することになります。どこまでが仲間か?
血のつながってる者までか? 同種までか? 同類までか?
自分以外は例え弟妹であっても食べてよい、それが他者を平等に
扱うということだ。というのがワニの解釈。んー深いですねぇ。
人間社会も、仲間か仲間でないかという線引きをどこにするかで、
全く変わってしまうところがあります。しかも線の位置が国家や宗教、
最近では個人レベルで違っているから、なんとも複雑です。
無関心という家に閉じこもり、逆らえない運命が通り過ぎるのを、
憂鬱という窓から覗きながら待つのも一つの智恵なんでしょうね。
この作品に出てくるほとんどの動物みたいに。
『我々は生きているのではなく、殺されないだけ』$N$そう考えた瞬間、自分の住む街がピクッと緊張するのを感じました。
でも、この状況は、なんだか世界情勢ににています。たとえば、ワニを日本にライオンをアメリカにカメレオンをアジア諸国に置き換えてみればよく理解できるのではないでしょうか。
梨木香歩さんの作品は、ある部分とてもシビアに現代社会を反映していると思うのです。
「この本、どう思う?」と、思春期の子どもにきいてみました。この絵本を読んで『絵本』に対する認識を新たにしたようです。