自分の人生について悩んだり、立ち止まったり
振り返ったりしている人に向けて
やさしく諭してくれる本だ。
生きている間の大方は、悲しみやあきらめなどの連続で、
その合間に小さな希望や喜びが、ぽっぽっと灯るのだ。
だから 多くを望まず、ただ自分の歩調で歩み続ける。
重ねられた 複雑でやわらかい色の絵が 胸に染みてくる。
「そう喜びや悲しみ 浮き浮きした気持ちや 寂しい気持ち
怒りやあきらめ みんな入った ユトリロの白
世の中の濁りも美しさもはかなさも」
ペンキをぬることが人の心を癒す。そんなペンキ職人のしんやの一生が、淡々と語られます。絵本であることのすばらしさが絵の中にあります。ペンキの色の中にさまざまな人生がこめられているのです。
年を追うごとに味わう切なさ、喜びや悲しみや不条理さ。
いろんな思いを抱き、みんなそれぞれの色を重ねていくのだろう。
全体の描写はとても淡々としているけれど、
深く人生に思いをはせてしまう。
お年寄りのおだやかだけど、深く悲しみをたたえた眼のような、
そんな印象を受けました。
5年後、10年後にまた読んでみたい。
そのとき私はどんな色を描いているのだろう。