日本が今後世界に貢献するために日本の国柄を如何に発揮できるのか、政治史・経済史などの観点からの大局的な現状分析を通じて大枠および具体的な提言をされていました。

明治維新による近代国家の成立とプラザ合意による欧米へのキャッチアップを超えて、21世紀には世界に文化的に貢献できる真・善・美のうち調和・共生につながる「美」に基礎をおいた文明の提言がされています。提言の背景にある「文化力」「士民革命」「四洲構想」など優れた分析の視点・概念化に支えられ提言が魅力的になっています。筆者は社会学者の使命を現状分析と述べていますが、現状分析からだけでは決して出てこない、さらには現状分析の枠組みと結論をも決めてしまう「構想(あるべき姿のデザイン)」にこそ筆者の強みを感じます。

無理に文句をいえば美の文明を提言する本のわりには装本が少し頂けないぐらいでしょうか。