別離か、それとも……
★★★★★
テメレア戦記(原題Temeraire)の第二作です。
中国皇帝の兄ヨンシンが希少種のセレスチャル種であるドラゴン、テメレアの返還を迫った事から物語の幕は上がります。
フランス艦から奪った正当な戦利品であると主張するローレンス、それを認めないヨンシンの議論は平行線となり、
結局テメレアとローレンスは事態を打開すべく一路中国大陸へと向かう長旅へと身を投じます。
長い船旅の中でテメレアの別れ意識するが、故国のためならば仕方がないのかと悩むローレンス、竜としての自分、そしてその境遇に疑問を抱き始めたテメレア。両者の間に初めて生じたすれ違いは物語の中のみならず、我々の世界に投げかけられた作者の疑問なのかもしれません。
そしてついに到達したテメレアの故郷で二人は人と竜を巡る信じられない光景を目にします。それは水面に投じられた石のように二人の心に大きな波を立たせます。最後に待ち受けているものは別離か、それとも……。
前巻に負けず劣らない怒濤の展開、交錯する多様な価値観。史実に基づきつつも、竜が当たり前のように存在する異世界を実に生々しくリアリティを持って描き出したナオミ・ノヴィクの大作は前巻を読んだ方はもちろん、是非まだ読んでいない方々にもおすすめしたい一冊です。