寝室から突然消えたアマンダ・マックリーディの捜索を依頼してきたアマンダの叔母ビアトリスが明かすアマンダの暮らしは、とても幸せとはいえなかった。母親のヘリーンは麻薬とアルコール中毒で定職もない。娘の失踪にも本気で心配するどころか、テレビの取材に娘の無事を訴える自らの演技に夢中になっている始末。
満ち足りた幼年期を送ったとはいえないパトリックは、この事件で傷つくのが怖い。しかし、これまで補佐役に徹していたアンジーがこの事件に異様な執着をみせることで2人の気分がすれ違ったまま依頼を受けることになる。
警察との良好な協力関係によって捜査は進み、アマンダ奪回のための映画ばりのハデなアクションシーンまで物語は一気にのぼりつめる。しかし中盤で、まるでエンストをおこした車のように物語は停滞する。これは単純な幼児誘拐事件ではないらしい。麻薬取引と取引の途中で盗まれた20万ドル、組織の仲間割れなどが絡んで事件の真相がいっこうに見えてこない。見えたと思ったら裏があり、その裏にはさらに裏がある。
複雑な展開が最後まで飽きさせない。これほどの長編を引っ張っておきながら、なんとも後味の悪いエンディングを用意するところなどは、レヘインの真骨頂といったところか。この答えでほんとうによかったのか。パトリックと共に迷い悩みながら、読者はひたすらに続編を待ち望むことになるだろう。(木村朗子)
私はかねてからレヘインのパトリック&アンジーシリーズ(本作は
第四弾)は、第1作から順番に読むべきだとお勧めして来ましたが、
本作を読んで初めて、その必要もそれほどではないなと思いました。
レヘインはちゃんと途中から読んだ最近の読者も
置いてけぼりを食わせないように配慮してくれています。
この探偵小説の良さは、本当はスーパーヒーローなんても
どこにもいない現実社会の中で、ほんの一瞬脚光を浴びてしまうときの
人間の弱い心を誰もが持っていることがよくわかることでしょう。
「ミスティックリバー」でレヘインを知った方にも、本当のレヘインの
良さはパトリック&アンジーシリーズだということを知って欲しいです。