白鳥の活躍は何処
★★★☆☆
田口・白鳥コンビというテレビドラマの印象が強く、白鳥の活躍も少ないことから、
少々物足りなさを感じながら読み終わった。
薄汚れてしまった医療現場にもさじを投げない速水の物語だったのですね。
ジェネラル・速水の収賄疑惑がどう裁かれるかが見せ場。
冷徹と思っていたジェネラルにも、理解しようとする職場のスタッフがいます。
だから、見事に速水が裁かれて終わりではなく、フェードアウトするように物語は終わります。
なかなか痛快
★★★★★
下巻は,速水部長の不正経理疑惑に関するお話が中心になります.普通の会社では会議というものは退屈なものと相場が決まっていますが,ここでは展開にニヤッとしてしまう部分もあり,会議の場面がこれ程面白いとは思いませんでした.
最後はジェネラル・ルージュ伝説の再来で終わりますが,ここまでくると先は読めてきますので,もう少し余韻を残した終わり方でもよかったかなと思います.でも,どんどん引き込まれて読めますので,是非どうぞ.
解説によると,本書と「ナイチンゲールの沈黙(上) (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)」は,同じ時間,同じ場所での出来事を違った側面から描写した作品だそうです.こちらもあわせて読むと更に楽しめるのではないかと思います.
作者の理想を投影した英雄譚。気持ちが揺さぶられる作品。
★★★★☆
(本作については、上下巻共に同様のレビューになっています)
どんな作家でも、物語を描く上で、「こうありたい自分」の理想像を
投影した人物を意識的・無意識的に生み出すことがあると思う。
本作の速水医師は、もしかしたら海堂さんにとってそういった存在。
投下できる資本・資金が減り続け、そして人海作戦の結果人員が
疲れ果てているとしたら、現場の将は血にまみれて闘うしかない。
そういった力強く、悲壮なメッセージを受け取った。
個人的には、『チーム・バチスタの栄光』で描かれた克明なバチスタ
手術の描写よりも、本作の速水医師による現場の描写の方が、
拙く荒々しい部分がありながらも、作者の魂を感じ、心に残った。
また、本作下巻の末尾に、シリーズの年表や登場人物をまとめた
特別付録が付いている。これを見たときに、「ああ、この人は、
エンターテインメントの分野で、ある一線を超えて普遍性を獲得
したのかも」と思った。
「読み返してもいいなあ」と思わせてくれる作品。
ロジカルモンスター白鳥はやっぱ好きです。
★★★★★
医療問題、収賄事件、災害パニック等あらゆる要素が詰った作品。前作「ナイチンゲールの沈黙」と平行して物語は進む。田口と白鳥は、二つの作品の中で縦横無尽に行き来し事件を解決していく。そのため「ナイチンゲールの沈黙」を先に読んでから読んだほうがおもしろさは倍増。速水の“ジェネラル・ルージュ”につながるある秘めたる思いとは?“ジェネラル・ルージュ”の背後に隠された驚きの真実とは
上下巻に分かれる弊害
★★★☆☆
長編の一冊ものとして描かれた単行本が文庫化され2〜3冊に分かれる。良く見受けられるケースです。
物語の進行に起承転結が必要なのは太古から現在に及ぶまで変わらぬ「読み物の鉄則」推理小説などでラストから始まって改めて起承転結という裏技を使い出したのも東野圭吾氏あたりからですから極々最近のこと。
なぜ最近ベストセラーと表されるミステリーほどそういう傾向が多いのだろうかと疑問を抱いていました。
本作を上下通して読んで理解が出来ました。
1冊の長編としては感じられない一つのストーリーとしての流れが上下に分かたれることによってカラーの相違が発生するからなのだと。
京極夏彦氏が装丁、紙質、頁数など拘りの強さから遂には従来の原稿提出型小説家ではなく自身でPDF形式で落とし直接印刷業者とまでやりとりするようになったと10年ほど前に知った時「偏執的なだけじゃないの?」と感じた記憶があります。
それが文庫化に当たっても同じ姿勢なのは出版社主導による商業的側面を持つ上下分割の弊害を嫌う作者としての究極の拘りなのだとよく分かりました。
本作は上下でカラーが異なると感じます。
どちらが良い悪いではなく、またその発生した理由が出版社側にあるのか著者が文筆業始められたばかりで慣れておられないせいかは分かりません。
しかし上下でカラーが異なってしまったことは残念に感じます。
「ジェネラル・ルージュの凱旋」としては星5に価する間違いない良作です。
しかし下巻だけで捉えると上巻と分離された色合いを感じ星3に減らさざるを得ないと感じました。
あとせこい話ですが頁数や装丁と比して価格が高いと感じます。
重版されると分かっている作品ですから価格設定が高い理由がわかりません。
下巻で評価を下げた理由、大半は作者に帰するのではなく出版社の姿勢への違和感に依るものです。作品の質は下巻でも高いと感じたことを重ねて表したい。