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サイボーグ・フィロソフィー――『攻殻機動隊』『スカイ・クロラ』をめぐって

価格: ¥2,835
カテゴリ: 単行本
ブランド: エヌティティ出版
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フィクションと現実の混同があるが・・・ ★★★★☆
ダナ・ハラウェイ『サイボーグ・ダイアローグス』の訳者としても知られる高橋透。本書では、まさしく新世紀の新しい倫理、サイボーグ・フィロソフィーが語られる。

本書の構成を説明しておこう。序盤ではネット文化におけるアバターや、ユビキタス社会の構想、BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)の技術の発達、ウェアラブルコンピューターの開発を紹介、さらにナノテクノロジーによるリバースエンジニアリングによって、その脳の可塑性をも暴かれ、もはや身体の変容は不可避なものとなった人類の現在の立ち位置を確認する。人類にとって「機械との融合」を象徴するサイボーグとは、もはや文学的なメタファーのレベルを超えて、今や現実味を帯びた近未来の像なのである。

中盤は本書副題にある通り、押井守がかかわった2つの作品『攻殻機動隊』と『スカイ・クロラ』の評論。前者は、志朗正宗の描いた原作版、押井の映画版、その弟子神山健二の手がけたテレビ版の3ヴァージョンをもとにした「ゴースト」比較論。ゴーストはあくまで「攻殻」という作品世界のキー概念に過ぎず、『スカイ・クロラ』にいたっては厳密に言えばサイボーグですらなく、この部分は半ば著者の趣味に近いものがあるが、それはご愛敬ということで。

本書主題、フィロソフィーは終章においてこそ語れている。その著書『人間の将来とバイオエシックス』において、ユルゲン・ハーバマスはバイオテクノロジーによる科学による人類の変容を批判しているという。その論に反論する形で、この著者独自のその「サイボーグ哲学」は語られる。詳細は本書を実際に手にとってもらいたいが、要するにハーバマスが自己目的性と1つの人格を保持したという観点において、「人間」には不可侵な領域があるべきだということを言っている。それに対して高橋は、ここまでのアニメ評論などを絡めながら、サイボーグが現実化した時代、自己決定権という観点からサイボーグ化は個人の自由として守られるべきものであり、また、一人1つという人格の個有性という所与の考え方も、『スカイ・クロラ』で描かれたような人格の複数性を勘案すれば、再考されるべきものだ、という。

前者の自己決定権に関して言えば、今でもピアスやタトゥーという身体の「変容」の自己決定権はあるわけだし、話としては筋がとおる。だがしかし、後者の複数の人格が云々かんぬんという話は、あくまでフィクションの中でしか実現しておらず、そこいらの現実とフィクションの混同を著者はどうするつもりなのかは本書ではうかがい知れないが、それでも「想像を絶するものに想像を巡らせた」といえる著者の仕事には一定の評価が与えられてもしかるべきものだろう。
原作を見ていないとつらいかも ★★★☆☆
「攻殻機動隊」と「スカイクロラ」をベースに、人間と機械の未来、さらには人間性を考察した哲学エッセイである。

著者はこれらの作品にひかれ、かなりマニアックな比較分析をしているが、
映画や漫画・テレビアニメを見ていない人たちにとっては、ちょっとキツイ。

関連して、櫻井圭記「フィロソフィア・ロボティカ」をお勧めします。


フィロソフィーである ★★★★☆
攻殻マニアなので一応買った。
最新のテクノロジーについては、ブレインマシンインターフェイス、バイオナノ技術などの記載があるが、知識のための知識にとどまっていることが否めない。
しかし、題の通り「フィロソフィー」が主の本であり、その部分において論理的な著者の考察がなされている。
早く不老不死になりたいものです。