速水御舟全集とも言えるような代表作品を網羅しています
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別冊太陽のムックに『速水御舟』が加わりました。オールカラーで160ページ全てが速水御舟の作品と解説ですから、編年体になっているページを繰る度に画家の成長と変貌を知ることになります。速水御舟の全作品と彼の足跡をたどるのには好都合の内容でした。
40歳という年齢で早世するまで、その生涯をたどりながら残された作品を見てきましたが、実に画風が変化し続けたのには驚きました。高い水準に到達していても満足せずに自ら積極的な方向転換をし、新しい地平を目指したその貪欲な画家魂に触れることができました。
美術史家の山下裕二氏と日本画家の松井冬子氏の対談はとても参考になりました。山種美術館の私の好きな「名樹散椿」を前にしてのコメントはこの作品の愛好家としては拍手喝采です。また代表作「炎舞」も同様に2人の前に掲げられています。山下氏も語っていますが、意外と小さく見えるのは不思議でした。それだけ作品の持つ魅力に圧倒されたのでしょうか。この2作品は昭和の芸術として最初に重要文化財に指定されたものです。象徴的な作品と言われていますが絵が観賞者に迫ってくるように感じられます。作品と対峙すれば、無言の迫力に圧倒されるほどの素晴らしさを実感できるでしょう。
1930年に開催された「ローマ日本美術展」の作品群はとても興味深いものでした。横山大観の「夜桜」ほかが掲載してありますが、日本画の魅力が詰まっている美術展だったと思いました。
巻末に速水御舟略年譜が所収されていますので、本文の作品と照らし合わせながら観賞するとその足跡が明確になるでしょう。