ダムというと推進側にも、住民側にも複雑な「事情」が絡んでいて、今までこのような本を読んだことがありませんでしたが、この本には莫大な記録が「活動」をしていない人にもわかりやすくまとめられています。

ダムをとりまく状況は日本の体制の縮図のようにも思え、そのような現状に対して、まさしく「奮闘」している淀川流域委員会の活動の記録を、行政や河川に関わる方々だけでなく、広く一般の方、大学生にこそ読んでほしい一冊です。

淀川流域委員会については、議事録や配布資料が全て公開されており、この本は、これらの資料の内容や関係者への取材結果を取りまとめたものである。内容はバランスよく、これまで淀川流域委員会の内容を良く知らなかった人々、流域管理に特に深く関わってこなかった人にとってもわかりやすい内容になっている。河川管理者側の意見があまり入っていないのは、取材に応じてもらえなかったからだと思われるが、「どうしてもダムを作りたい」理由を面子の問題に収束させてしまったのは、少し短絡過ぎるように感じる。この点を深く突っ込んでいると、更に素晴らしい作品になったと思う。但し、膨大な資料、広範な関係者の関係を解き明かし、一冊の本にまとめられたのは、淀川流域委員会という日本の水管理の歴史に残るであろう試みを世間に広めるためにも画期的なことである。河川管理に関わる人にとっても、一般市民にとっても必読の書であるといえる。

公益法人に天下った官僚OBが河川行政を牛耳る前世紀型の審議会を脱し、次世代型の審議会がなぜどのように目指されたのか、登場人物たちの語りで明らかにされている。「原則としてダムは作らない」とは何を意味するのか、それが誰にどう妨害されようとしたのか、ホームページに残る膨大かつ克明な生データを読む時間がない人にとってはダイジェスト版として有効だ。また公式記録には残らないおどろおどろしい裏側のできごとも、さりげなく補完的に記録され、付加価値を増している。「官僚OBの暗躍」で触れられた3人の河川官僚OBは全員が取材を拒否したとある。語られた、本人達にとって都合の悪い事実を裏付けたことになるのではないか。

結論ありき、視野が狭い、取材先が恣意的に限定されている。

流域委員会は淀川を含めて全国に１００以上存在する。なぜ淀川だけがこれほどこじれたのか。その比較検証をすれば、現在の河川行政が抱える問題もそうだが、それ以上に、淀川流域委員会が抱える固有の諸問題に、容易に気づくはず。
一度でも実際の淀川の流域委員会を傍聴したなら、それがダム反対の考えをもつ者に偏っており、委員会の最後に「傍聴者からの意見」として傍聴者が金切り声をあげて一方的に行政に罵詈雑言を浴びせる光景には異様さを感じるであろう。

取材先がほとんどすべて流域委員会を肯定的にとらえる人物（その多くは地域住民の生活とは直接関わりのない、現実問題を軽視した者）に限られており、実際にダムのために移転した住民、過去に大きな洪水被害を受けた市町村長（直接の利害関係者でありながら流域委員会に翻弄された方々）に対する取材が全くなされていない。
また、ダムに反対の某知事は住民の財産を守り立場でありながら「湖周辺では浸水してもよい」と言っているが、このようなことも含めてすべてを取材して明らかにするという公平な姿勢が感じられない。

はっきり言って０点、星はゼロ個が相応しい。