ユニークで冷静な日本論
★★★★★
本書は、欧米人の考え方に精通した上で「日本」を見つめてきた筆者による3冊目の日本論である。いわゆる「日本礼賛論」ではなく、日本社会や日本の組織の特性とイノベーションのあり方を、「こと」的世界観、役割ナルシズム、思いの共有化、プロセスの進歩といった概念を用いつつ、深いところから冷静に論じている。抽象的な議論を、具体的企業や事例を用いて展開しており、特に、ゲーム機やゲームソフトの興亡を通じて語られる文化論は興味深い。
多様な要素をやや「詰め込み」すぎたきらいもあり、必ずしもわかりやすい本ではないが、じっくり読めば、日本の組織とイノベーションの活性化に向けたヒントが得られる。とりあえずは、日本人が、筆者の言う「見てみて、褒めて症候群」から脱却するとともに、互いの役割に対する相互尊敬を回復することに努めることが必要であろうと思われた。