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心でっかちな日本人 ――集団主義文化という幻想 (ちくま文庫)

価格: ¥819
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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   終身雇用制の崩壊やリストラ、いじめなどといった日本が抱える問題の根本原因を、すべて「伝統的な文化の衰退」に求める論調がある。西欧の個人主義思想が入ってきて思いやりの心がなくなってきたため、日本文化が衰退し、殺伐とした世の中になってきたという説は、果たして本当なのだろうか。

   本書のタイトルにもある「心でっかち」とは、心と行動のバランスがとれなくなってしまっている状態を指す、著者の造語である。日本人は集団主義だなどという通説も、実は心でっかちの思い込みにすぎないということをユニークな実験で実証しているが、心でっかちな思考が、どれだけ私たちの「現実を見る目」を曇らせているかが理解できる。

   ただし、本書の大半を占める社会心理学の実験は、似て非なる内容が続き、あまり耳にしない用語も出てくるため、丁寧にたどっていかないと混乱してしまう。やさしい言葉に置き換えて説明されているとはいえ、読み通すには少し努力が必要かもしれない。

 「文化は、私たち自身の行動によって生み出され支えられている」ということが理解できると、次に気になるのは、大きな変化の時代にどう行動するべきかであろう。その答えは、本書にはない。ただ、現実を正しく見ようとする人と、心でっかちな見方しかできない人との行動には、大きな差が出てくることは確かなようだ。(朝倉真弓)