本書のタイトルにもある「心でっかち」とは、心と行動のバランスがとれなくなってしまっている状態を指す、著者の造語である。日本人は集団主義だなどという通説も、実は心でっかちの思い込みにすぎないということをユニークな実験で実証しているが、心でっかちな思考が、どれだけ私たちの「現実を見る目」を曇らせているかが理解できる。
ただし、本書の大半を占める社会心理学の実験は、似て非なる内容が続き、あまり耳にしない用語も出てくるため、丁寧にたどっていかないと混乱してしまう。やさしい言葉に置き換えて説明されているとはいえ、読み通すには少し努力が必要かもしれない。
「文化は、私たち自身の行動によって生み出され支えられている」ということが理解できると、次に気になるのは、大きな変化の時代にどう行動するべきかであろう。その答えは、本書にはない。ただ、現実を正しく見ようとする人と、心でっかちな見方しかできない人との行動には、大きな差が出てくることは確かなようだ。(朝倉真弓)