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ブライトン・ロック (ハヤカワepi文庫―グレアム・グリーン・セレクション)

価格: ¥1,050
カテゴリ: 新書
ブランド: 早川書房
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絶対悪は存在するか ★★★★★
本作は、常に剃刀と硫酸の壜を持ち歩き、わずか十七歳にしてどんな暴力をも厭わない
(時には人殺しさえも)不良少年と、彼の大罪に気付きつつも彼への愛を惜しまない
(どころか彼と一緒に大罪を背負う覚悟までした)少女、そして自身の正義のために
彼を執拗に追い回す女との駆け引きを描いた、英国、そして二十世紀を代表する
作家の一人であるグレアム・グリーンの初期作品にして代表的長編である。

頁数は五百頁弱で、いささか長いように思われるが、グリーンの軽快な筆致と
丸谷才一の名訳が巧く合わさり、見事にそれを感じさせない。私は文字通り、
息つく暇もないといった具合に、一気に読み終えてしまった。

この作品の主題は、何といっても『善と悪』についてだろう。法治国家や、
世間一般の倫理観では、どう考えてもアイダ(女)の行動が正しい。だが、アイダの
独善的な善悪・正義の定義(それを相対的なものだとは認めず、自らの考えを盲目的に
絶対と捉えている)は嫌悪感すら覚えるし、ピンキー(不良少年)の物の見方(例えば、
恋愛やセックスに対する)や鬱屈とした立場から来る、言い知れない、そして誰もが
経験するわけではない不毛な怒りに、十代半ばの自分自身を見てしまった私は
ピンキーの側に立つしか術はなかった。いや、この作品を読む前は確かに抱いていた
正義感を捨てずに、アイダを応援出来る人間は、一体何人いるのだろうか。
無駄話が過ぎた。とりあえず、この作品を十代の貴方、そして瑞々しい感性を
忘れない貴方に薦める。グリーンの作品を十代の頃に読めた人は、幸運だ。

追伸
人一倍正義感を持っていると自負していた私だが、読了後はアイダに殺意を抱いた。
それほどまでに、正義とは脆く、相対的なものなのかもしれない。