ますます楽しみなシリーズ♪
★★★★☆
「八丁堀純情派」を名乗った不破龍之進、緑川鉈五郎、春日多聞、西尾佐内、古川喜六、
橋口譲之進。彼らは成長し、後輩もできた。そしてついに、古川喜六が結婚することになった。
嫁になる芳江の父帯刀清右衛門は、かつて上司の不正を暴こうとして失敗し、閑職に追いやられた。
「自分ならどうすべきか?」龍之進の心は揺れる・・・。表題作「我、言挙げす」を含む6編を
収録。髪結い伊三次捕物余話シリーズ8。
今回の作品も読み応えがあった。「粉雪」では凶悪な事件を扱っているが、伊三次と伊与太の
ほほえましい親子関係に救われる思いがする。「委細かまわず」では、直面した問題に正義感の
強い龍之進の苦悩する様が描かれている。小早川も、考えれば哀れだ。「明烏」では、お文の
不思議な体験を描いている。「もしあの時、違う道を選択していたのなら・・・。」お文の心の
動きが、興味深い。「黒い振袖」では、お家騒動に巻きこまれた姫君と龍之進との淡いふれあいが
印象的だ。「雨後の月」では、弥八とおみつ夫婦の関係をしっとりと描いている。人間、生きて
いればいろいろあるものだ・・・。表題作「我、言挙げす」もよかった。おのれの信念を貫くことは
大切だが、それだけではどうすることもできない問題も多々ある。
この作品のラストでは、伊三次一家にまたまた試練が降りかかる。「八丁堀純情派」、そして
「本所無頼派」は、この先どうなっていくのか?ますます楽しみなシリーズだ。