一般受け主人公しか受容れられない人にはけして理解できない珠玉の名作☆
★★★★★
『ヨコハマ物語』『あさきゆめみし』などの作者大和和紀さんの作風からすれば異色になるかもしれないが、往年の少女漫画の世界ではかなりスタンダードな「SF」と「ファンタジィ」と「伝奇的ミステリー」の絶妙にミックスされた、陰りある美しい主人公の不思議な物語の連作短編集。
主人公は、薔薇の館に隠れ住む神秘的な青年子爵ギデオン。各地を放浪し、その数奇な肉体ゆえに、人間の愛と悲しみの渦に引き込まれてゆきます。
ギデオンとは、女であって男であるもの・・・人間であって、人間でないもの・・・そのテーマは、他に理解されない疎外された天使的人間の辿る運命の悲しみを描くことかもしれない。
そこにタイプも運命も違うが、竹宮恵子のジルベールとかソルジャー、萩尾望都の少年の帯びた寂しさや憂いと共通する孤独感が見えて、私はたいへん共鳴できる。
物語は美しいタッチと劇的な内容、それに魅力的なキャラクターが、一際鮮やかにギデオンの存在を浮き立たせています。
ここ10年で急にフランスの世界遺産で観光スポットとして有名になった、あのモン・サン・ミッシェル(大天使ミカエルの降り立った聖山の島)が舞台の作もあり、もしかしたらこの『薔薇子爵』は、モン・サン・ミシェルを最初に描いた少女マンガになるのかもしれません!
−とにかくSF、天使、翳りある憂いの孤独な美しい主人公好きは必読の名作です☆