編者の吉行淳之介(もう亡くなってから久しい)に始まり、安岡章太郎、瀬戸内晴美、遠藤周作、、、と、現代文学史に出てきそうな人たちから、最後の方(時期別になっているので、最後は昭和63年)は山田詠美、吉村昭、という32人の作家によるエッセイである。
「某月某日」で始まる、いずれも酒(というより酒を飲むこと)に関わる他愛もないエッセイは、ある意味ではブログそっくりであるが、大きく違う点が二つほど。
一つは、その内容。
バーからバーへとはしごを続け、気が付いたらパジャマで朝の新宿を歩いていたとか、作家同士、昼日中に相手の家に押しかけ、飲んでは人を呼び自分も出かけるという、ちょっと前の「作家」イメージが見事に再現されている(というより本物)。
もう一つは完成度。
内容そのものは「他愛ない」が、一つ一つ、読んでいくと味がある。やはり、商品として存在している文章だけのことはある。ブログに違和感を感じるのはこの辺りで、何の責任も負わない、自分だけの書きっぱなし、というのはどうも(ごめんなさい)。
「朝、家で起きてみると、やはり目の前に大きな鬱のクマがいた。しかたなくまた死んだフリをする。」
こんな文が書ける酔っぱらいって、すごいと思う。