当代随一の話芸の名手であり、酒を論ずればバッカスも顔色なしという二人が、酒の入口から出口までを縦横に語りつくした長編対談。 人はなぜ酒を飲むのかの大命題にはじまり、鮭の品定めや飲み方、酒場あれこれ、酒癖のさまざま、二日酔いのなおし方から文学、映画、セックス、風俗まで、話題は森羅万象に及ぶ。 ワインの芳醇さとジンの強烈さが見事にブレンドした極上の一巻。(本文庫カバーコピーより)
酒を語りつつ人生を語る
★★★★★
鯨飲馬食の開高健、斯界の修行僧、吉行淳之介
”四畳半襖の下張り”裁判弁護のコンビが
織り成す美酒の世界は、
恐妻家のブラッディ・マリーやシェリーに始まり
戦後のカストリ、アブサン、ワインを経て
スピリッツに至り、果ては二日酔い迄見逃さない。
酒を語りつつ人生を語る、含蓄に富んだ二人の会話。
面白くないわけが無い。
タイトルからして「ほのめかし」の大人の1冊
★★★★☆
吉行さんと開高さんが集(つど)って「美酒について」という書物を出すのだから、そこで語られ、記されている内容の半分は、美酒についてであろう。残りの半分はおそらくそうでなくてあのことについてであろうなあ、と思って手にしたらやはりそうでした、でも、同じあのことを語るにしてもさすが名人の手にかかると違う、と思わされること請け合いの、大人のための名対談集。
と、お定まりのほめことばに続けて、それだけでない、と記しておきたい。
この本の眼目は、酒、女、旅について語るお二人の輪郭から、戦後の焼け跡の匂いが、ふっと立ち上ってくるとことにあります。もうひとつ、昔、村には、一人か二人、彼らのような旅を生業とする語り部がいて、旅先から珍味、珍酒、珍奇なみやげ話を持ち帰ってくれた、そういう囲炉裏端の幻が、浮かんできます。
たかが人生のみやげ話、されど同じ語りなら、芳醇で、透明で、どこか懐かしい、燻しの香りが立ち込める本書をお勧めします。
酒と人生
★★★★☆
話芸の名手とあるが、それよりも日本を代表する小説家のお二人がお酒をめぐって人生を語っていることに一読の価値を感じた。
酒とはなにか。古今東西、酒にまつわる話題に尽きることはない。酒そのもの薀蓄もさることながら、酒の話題から人生の深奥にせまっていく対談に、お二人の豊穣なる見識と含蓄の深さに感服させられた。
なかでも、(酒も)女も7勝8敗とい美学を大切にしたいといアフォリズムが心に残った。
巻末に掲載されている「銘酒豆事典」も大変参考になった。
酒飲みの対談
★★☆☆☆
1982年に「サントリー博物館文庫」の5巻として、TBSブリタニカから発売されたものの文庫化。
文壇でも有数の酒飲みとして知られる、開高健と吉行淳之介が、酒をテーマとして行った対談が文章化されている。
酒を飲みながら酒を語るという、ある意味では理想的な対談である。二人の飲んできた美味しい酒、珍しい酒、苦い酒などが語られ、やがて人生論へと発展していく。さすがに酒と人生に豊富な体験を持っている二人だけあって、飽きさせない内容だ。
しかし、面白いか、といわれると微妙だ。二人の小説やエッセイに比べれば格段に落ちるし、対談として傑出した内容というわけでもない。
二人のファンなら読んでみても、という程度だろう。
お酒と女の子
★★★★★
お酒について二人の大御所が対談した本書。お酒の話というよりは、人生の指南書になっている。最近の若い人達はお酒を飲まなくなってきているというが、そのような人達が本書を読んだらどんな感想を抱くのであろうか、非常に興味がある。
さて内容は大御所達の御酒にまつわるこれまでの経験を語り合っている。本当に飲みながら語り合っている、リラックスしている様子が伝わってきて、楽しい。
やはり人生の達人であり、飲酒というと一見無駄な行為に見られてしまうかもしれないが、その無駄の部分にグットくるものがあるのです。人生にフックを与えてくれるのです。あー飲まない人達もったいないですよ。
本書の中で教えられた一言は「女性とは7勝8敗でいい」の一言。人生経験がないとこんな香り立つ一言は出てきません。名言です。