食通でも知られた著者の、北海道から九州まで全国津々浦々の行きつけの店23件を紹介したエッセイです。ただ、著者のエッセイだけに、単なる名店の料理ガイドになってはいません。それどころか逆に、料理についてほとんど触れられていないお店もあります。なぜなら、著者にとって行きつけの店とは、「私にとって大事なのは、店の雰囲気や従業員の方である」からです。従って、その店の料理だけでなく、お内儀や板長、従業員たちの人となりを逸話を交えながら描いたヒューマンエッセイともいうべきものになっています。また、お店の雰囲気や従業員を捉えた写真が各店ごとに2枚ずつあるのも、お店を知る上で嬉しい限りです。
でも、どうしても味が気になる方には、著者の次の言葉を贈ります。「ここで、諸君に質問する。こういう店が不味いと思うかどうか。・・・そうだ。それでいい。きみの答えは正解だ。」