司法試験定義趣旨論証集(物権)
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本書は、司法試験の論文式試験対策として、覚えておくと役に立つ民法の物権(担保物権を含む)の定義(意義)、趣旨、論証をまとめたものです。
重要度に応じて、項目ごとにAAからCまでのランク付けを付しました。
現在の司法試験の論文式試験は、全体的にみると、個々の論点の理由付けよりも、事例処理が重視される傾向となっています。
ですので、基本的には、理由付けよりも規範を重視して理解、記憶し、答案では、端的に規範を示して当てはめる、という流れで書いていくというのが基本です。
本書も、基本的なスタンスとしては、上記の考え方を基礎にしています。
もっとも、民法の最近の傾向をみると、多数の論点をコンパクトに処理する事例処理というよりは、個別の論点を制度趣旨や既存の判例法理からじっくり説明させようという出題が増えているように感じます。この傾向は、民訴法でもみられる傾向です。
本書では、そういった傾向を踏まえ、制度趣旨や理由付けをやや重視した内容としています。
本書は、他の科目のものと同様、基本的には判例法理を端的に論証化するようにしています。
ただ、例外的に判例とは異なる立場を採用した分野があります。
それは、譲渡担保です。
譲渡担保に関しては、現在でも、判例の規範をそのまま当てはめるというよりは、素朴な(設定者留保権説、二段階物権変動説、物権的期待権説などに緻密化されていない)担保的構成から、論理的に結論を説明できるかが問われており、また、その程度で十分です。
そのため、譲渡担保に関しては、必ずしも判例の立場にこだわらず、素朴な担保的構成の立場から一貫した説明をすることとしました。
論点の網羅性が高いのも、本書の特徴です。
最新の論点も含め、幅広く論点を収録しました。
例えば、本書では、いわゆる新しい中間省略登記についての論証も収録しています。
中間省略登記については、「不登法の改正により登記申請に登記原因証明情報が必要となったため、事実上中間省略登記はできなくなった」というところまでで止まっている人が多いように思います。
しかし、不登法改正後も、第三者のためにする契約や買主の地位の移転を利用した中間省略登記は可能です。
(規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申(平成18年12月25日)より引用)
不動産登記制度を所管する法務省との間で、甲乙丙三者が売買等に関与する場合であっても、実体上、所有権が「甲→丙」と直接移転し、中間者乙を経由しないことになる類型の契約に該当する「第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転登記」又は「買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転登記」の各申請の可否につき、具体的な登記原因証明情報を明示した上で、いずれも可能である旨を確認した。ついては、現場における取扱いについて、誤解や不一致が生ずることのないよう、各登記所や日本司法書士会連合会、不動産取引の関連団体を通じて、登記官、司法書士、不動産取引の当事者、関係者に対して上記の照会回答の内容を周知すべきである。
(引用終わり)
上記を受けた平成19年1月12日法務省民2第52号民事第2課長通知により、実務上は、上記の方法による中間省略登記が可能であることが知られています。
(平成19年1月12日法務省民2第52号民事第2課長通知より引用)
第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の登記の申請の可否について(通知)
標記について、別紙甲号のとおり規制改革・民間開放推進会議住宅・土地ワーキンググループ主査から当職あて照会があり、別紙乙号のとおり回答がされましたので、この旨貴管下登記官に周知方取り計らい願います。
別紙甲号
平成18年12月21日
法務省民事局民事第二課長 殿
規制改革・民間開放推進会議
住宅・土地ワーキンググループ主査
第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の登記の申請の可否について(照会)
甲を登記義務者、丙を登記権利者とし、別紙1又は別紙2の登記原因証明情報を提供して行われた甲から丙への所有権の移転の登記の申請は、他に却下事由が存在しない限り、いずれも受理されるものと考えて差し支えないか、照会します。
別紙1 略
別紙2 略
別紙乙号
法務省民二第2878号
平成18年12月22日
規制改革・民間開放推進会議
住宅・土地ワーキンググループ主査殿
法務省民事局民事第二課長
第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の登記の申請の可否について(回答)
本日21日付け照会のあった標記の件については、いずれも貴見のとおりと考えます。
(引用終わり)
市販の論証集やテキスト等では、どうもこの点のアップデートが不十分なように感じます。
そこで本書では、各方法に関する論点について、コンパクトな論証を収録しました。
本書が、受験生の方々の学習に少しでも役に立てば幸いです。