これは小説?
★★★★☆
ドキュメンタリーなのに、登場人物の描写が具体的かつ小説的なため、TVドラマを見ているような錯覚をしてしまう。登場人物の欠点までも、ありのままに描いているため、抗議が来たのでは、と想像する。
カラバッジョ好きは、絶対読むべし。
イタリアの古文書が良く保存されていることには驚く(日本では考えられない)。イタリアの大学の教育水準のひどいことも良くわかる(日本並みか?)。
ミステリタッチのノンフィクション
★★★★☆
スリーパー(埋もれている名画)発見ものの実話。映画にもなった『シビル・アクション―ある水道汚染訴訟』で知られるジョナサン・ハーの作品で、前作同様、ノンフィクションというよりもノンフィクションノベルだ。
小説だったら「穴」として指摘されそうなところが散見されるが、これが事実なんだから「文句あっか」ということになるだろう。事実は小説より奇なり。
しかし、この本の最大の「穴」は図版が一枚も収められていないことだ。うちにはカラヴァッジョの図録も画集もあり、ダブリン(アイルランド)の地図もロンドンの地図もあるけれど、本来、われわれ読者にそれらを自前で用意しろというのは無理な話だ。ノンフィクションをうたっているのだから、最低限の図版を入れるのは当然だと思う。岩波書店ともあろうものが情けない。
カラヴァッジェスキ
★★★★★
1990年に発見されたカラヴァッジョの作品「キリストの捕縛」に関する物語。
ノンフィクションといっても、小説のようだ。映画的でもある。
現代を生きるの「カラヴァッジョ」を取り巻く、学者、研究者、修復士、
などなどの魅力あふれる人物たち。
小さな手がかりを探して、粘り強く探求する「カラヴァッジョ病」の人たち。
ミステリや探偵小説を読むようにわくわくした!
「キリストの捕縛」以外にも沢山の絵が出てくるので、
画集をひっくり返して眺めながら読んでしまった。
こういう作品こそ、映画になったら面白いのに。
とても気持ちのいい作品です
★★★★★
私は特別カラバッショのファンではありません。また、本書を読んだからといってカラバッショのファンになることもないし、また本書からカラバッショが特段魅力ある人物として浮かび上がってくるという体験を得ることもありませんでした。
しかし、ここに登場する人々のなんと生きいきとしていること!
年老いた教授の背中が見えてくるようであり、主人公である女子大生のおしゃべりがローマの街角から聞こえてくるようであり、少しひねくれた修道士のなんとなく陰惨な横顔が見えるようです。
おそらく、作者は狂おしいぐらいの熱い心をもちながら、他方では無用な心理描写を極力抑制した文章だからなのでしょう。
とても気持ちよく読めたし、読後感もすがすがしいものがあります。いい作品であり、バランスのとれた素敵な作家のように感じました。
カラバッジョ・ファンは必読
★★★★★
カラバッジョ・ファンを自称する読者たちにとって、この本はこれまでに学んだ切れ切れの知識・情報を、見事にストーリーとしてつなぎ合わせてくれる。カラバッジョの愛人、カラバッジョの犯罪など、独立した情報が、生き生きと登場してくる。すばらしいノンフィクションをものした、その取材力に頭が下がる。後半部に出てくる新聞記者のスクープ物語が多少、そらぞらしく見えるが…。