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偶然の音楽 (新潮文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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理性と衝動との強烈な葛藤 ★★★★★
物語世界の中に読者を強く引き込む力を備えた作品である。

読み終えて思ったのは、登場人物たちが、理性と衝動の狭間に立たされて、迅速な判断を下すことを迫られる場面が
実に頻繁に出てくるということ。

そしてそのことがまさに、この小説を、衝撃的な結末へと邁進させていくエネルギーの源になっている。

ヒトを襲う衝動を取り巻く、さまざまな要因(狂気、破壊、性)が、巻頭から巻末まで、ぎっしりと詰め込まれており、
それが一個の生命体となって、作品内を激しくのたくっているような感じがした。
読んでいる最中、胸が苦しくなってくるような気分を覚えた。

この小説は、読者にエネルギーの消費を要求してきます。覚悟して読んでください。




偶然の読書 ★★★★☆
たまたま本棚にあったから手にとってみました。僕にとって、初めてのポール・オースター作品がこれです。

僕はよく「その作家との出会いの作品」でハズレを引きます。そして「きっとこの人のは、ハズレしかないんだ」という強固な偏見のもと、二度と同じ作家のものを読まなくなることしばしばです。でもこの本は、少なくとも僕にそう感じさせはしませんでした。だから僕はまたいつかどこかで、別なオースター作品を読むことになるかも知れません。

問題は「いつどこで読むか」なのですが、僕がそれに明確に答えられるような読者なら、この本に魅力を感じたりはしなかったんじゃないかなと思います。多分、たまたまどっかの本棚にあるのをまた見つけたときかな。

つまり、これはそういう小説だろうと思いました。

起承転結のそれぞれが必然性を欠きつつも、それなりの連続性を持ち続けており、そしてそのことが何やら妙なリアリティを演出しているようだと感じさせたのです。だから、よく考えれば奇妙な物語じゃないかとも思うのですが、「でもね、それが彼らの人生だったのさ」と言われれば「ふうん」と納得してしまいそうになる。そのあたり、割と絶妙なバランスです。

まあ話の筋には触れないでおこう。大抵いつも触れないんですけど、この本の場合、とりわけ意味がなさそうだから。
衝撃的な結末 ★★★★★
衝撃的な結末。決して予想外というわけではないけど、やはり、あの終わり方にはショックを受けた。

小川洋子が後書きを書いていたけど、たしかに、オースターの小説には閉塞感がある。主人公がそこからどう脱却しようとするかという、テーマはムーン・パレスと共通だ。なんだか、身につまされる話だ。
跳ぶ前に見ろ ★★★★★
 ポール・オースターの作品をそう多く読んでいるわけではないが、この作品は多くの読者に鋭く迫るものがあったのではないか。少なくとも自分には、衝撃的な内容だった。

 一言で言えば、この小説は通俗的な意味でのアメリカの理想主義、楽天主義的な人生把握の形式、つまり物語の形式に対する激しい批判だ。「見る前に跳べ」とか、「迷わず行けよ、行けば分かるさ」といったオプティミズム、偶然に対して自分を賭けていく理想主義がどんな風に利用され、悪用され、人生自体を台無しにされるのか、というのを物語の形にしたのが本書で、その内容は、今日本で流通している通俗的な楽天主義をも激しく批判し、相対化している。

 状況の中にどんな人々のどんな目論見があり、どんな風に事は進んでいくのか、著者の筆は暗に、「跳ぶ前に見ろ」と言っている気がしてしょうがない。スラヴォイ・ジジェクも言っているように、状況を前にして考えることを放棄してはいけない、そんな事を思い返させてくれる1冊だった。
完結させることの難しさ。 ★★★★☆
掴もうとしているチャンスが自分に有利であると感じたとき、
人は、大きなプレッシャーを感じてしまう。

誰の人生にも不思議と分岐路が存在し、
それを制するかどうかで大枠は決まってしまうのだ。

彼らは勝利を掴みかけていた。
おおよそ勝負がついたかと思えたとき、ふと目を瞑り冷静を保ちたいと思った。
運命が変わってしまう前に、少しだけ外の空気が吸ってみたいと思ったのだ。

ところが、我に返った時には掴みかけていた幸福は去り
過去も未来も持てるもの全部を失ったことに気づく。

それから先はもうどこにも辿り着くことはできない。
人生は彼の手を離れてしまった、永遠に。

残念だったね、物語は終わった。ジ・エンドさ。
こんな風に主人公の人生と物語は終わってしまう。