法哲学の入門書
★★★★☆
本書は,法哲学等の基礎法学の入門テキストである。
本書の特徴をいくつか挙げてみよう。
1.通常の法哲学の概説書と異なり,基礎法学と実定法学の交錯領域が重点的に取り扱われている。例えば,契約法(第3章),民事訴訟法(第4章),刑法(第5章)などの実定法を基礎法学の観点から批判的に検討しているのは珍しい。
2.概説書の体系は,編者の田中成明教授(京都大学)の見解に従っている。田中成明教授の基本書『法理学講義』をより簡易に説明した著書という位置づけもできるだろう。
3.中山竜一先生の手によるコラム欄が充実している。コラム欄では,プラトン,アリストテレスからカント,ヘーゲル,ウェーバーまで有名な法哲学者が簡潔に紹介してあり,初学者には嬉しい。法実証主義,自然法論,批判法学など法哲学の概説書で当然の前提とされてしまうテクニカルタームの説明をコラムで行っている点も良い。
田中成明教授の『法理学講義』から入るのはやや重いかなという方にオススメである。