初単行本化20周年記念出版の『アルティメット・エディション』全２巻の上巻。
すでに旧版を持っている身としては、値段が高く、購入に躊躇したのですが、高いだけの理由はある！買ってよかった！の愛蔵版です。

B5大判とサイズも大きくなり、紙質も良く、とても読みやすくなっています。
巻頭カラーの色も、美しくなっています。
画全体、特に登場人物の表情が、過去の版と比べ、格段に鮮やかになり、物語が豊かに、奥深くなっています。

もちろん、これは作画担当の藤原カムイによる完全デジタル・リマスターが最大の成果であるのですが。
下巻の作者あとがきで語られていますが、単なるデジタル化ではなく、物語の完結までに年月を要したことによる質感の違いの補正や、登場人物のキャラクターの統一などといった大幅な加筆修正が加えられているそうです。


上巻の巻末には、
◎ 千葉繁による特別寄稿
◎ 吉祥寺怪人による『ケルベロス・サーガ概論』
◎ 首都警の組織解説
◎ 出渕裕による設定資料のデザイン画
◎ 上巻に収録した各話の解説
◎ （簡単な）用語解説
◎ 初出一覧
が収められています。

千葉繁と『犬狼伝説』とは直接の関係はないのですが、一連の『ケルベロス・サーガもの』の原点である『紅い眼鏡』撮影時のエピソードがおもしろおかしく回想され、続いて吉祥寺怪人による解説で、『犬狼伝説』への発展（成長？）の過程が説明されているあたり、心憎い限りです。

各話の解説も、短文ながら的確な内容でストーリー全体を繋ぎ合わせ、絵には現われなかったシナリオ設定も紹介されているのが秀逸です。


電子書籍という流れが大きくなろうとしている今、このように贅沢な『本』を手に取ることができるのは、シアワセなことであります。

映画監督押井守による「ケルベロス・サーガ」。
実写映画のみならず、マンガやアニメ・ラジオドラマへと
その語り継がれる領域は今も尚、拡大し続ける
壮大な日本「偽」史である。

本巻は初単行本化20周年記念出版の上巻。
上下巻で今までに描かれた『犬狼伝説』
全エピソードを収録している上、漫画家藤原カムイが
自身の手で全面デジタル加筆して仕上げている。
少し高価だが、映画一作目からのファンには
堪えられない豪華さである。

おまけは千葉繁と吉祥寺怪人の特別寄稿。
巻末の設定資料も充実の出来。