血湧き肉踊る現場を生かす学問
★★★★★
「一方的に質問を重ね、調査票を埋めることに終始・・その結果を集計して、平均的な姿を算出し、報告を書いてp.23」いたのでは、「「現場」の非常に限られた側面しか見えてこない。P.23」「「対話」しながら、徹底的に彼(彼女)の話したいことを引き出すのである。そこには、事前の資料による常識とは全くp.23別の世界が拡がってくる。そこから新たな「発見」が生じるp.24」「「現場」調査を実施する際、相手にとって有益であることを提供すべき。P.24・・私たちは「現場を育て」「自分も育つ」ということが必要p.25」「訪問した「現場」に関心を抱き、質問、対話を重ねながら、「提案」を行おうとすることが大切p.25」「産業、企業の「現場」調査を実行しようとするならば、地元産業界に重要な影響を及ぼしているルートを探し、当方と付き合うことは利益があることを理解してもらわなければならない。・・その利益とは、・・取引先、投資者の紹介であることはいうまでもない。・・・日本国内でしっかり仕事をし、各部門に有力なつながりを持っていることが不可欠なのである。p.48」「日々「現場」に身を置き・・特に異常値といわれて放置されている最先端と、誰も関心を示さない一番後ろに残った部分に最大の関心を寄せる・・この二つの対比的な構造分析から、全体の構図を立体的に組み立ててp.122」いく。こうした現場調査を重ねている先生は「「研究」などはさほどの意味はなく、何かを変えようとしている人々と共に歩むことの重大性が深く実感されてp.179」いる。「地域産業振興の最大のポイントは、p.28・・会うたびに飲むことp.29」なのだ。
現場ってどういうことよ?が分かる本
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本書は、地域産業振興を専門とする関 満博教授がどのようにして「現場」に入り、「お客さん」から「同志」として認められ、結果を出すかということについて述べられている。具体的な結果に土江は他の著書を参照すべきだが、本書を読んでいると、自分が現地調査に行くかのような感覚を得られて、ビジネス小説的な楽しさを得られる。
モンゴルのものづくり企業を訪問し調査された時の一連の流れが詳細に描かれている。つまり、手荷物の内容から現地での生活方法等の身辺に関する事柄から、訪問する企業のアポイントの獲得の流れ、そして訪問した企業について等の調査に関する事柄までが記されている。
本書のキーメッセージは、「地域と一生付き合う」ということである。関教授の場合は、非常に呑みニケーションを重要視されているが、密なコミュニケーションを取り、相手の役に立つことで、「地域と一生付き合う」ことを勧めておられる。逆に地域振興の報告書を提示するために、一時的な調査に終始するというのでは本当の結果は出ないと何度も述べられている。
衝撃!”現場を知る”とはどういうことか
★★★★☆
本書で一番驚いたのは、現場調査とその研究を専門分野とする著書の圧倒的なパワーと”現場を知る”事に対する情熱である。
海外視察を行う際は、なんと2週間で40〜50の現場を調査すると言う。
本当にその地域を知る為には、現地の人々といかに真剣に付き合い、信頼関係を築くかが最も重要であり、ともに語らい、熱くならなければ真実を把握する事は困難と述べている。
”現場を知る事が大切”と良く言われるが、本書を読むとそれは甘くないなという気になる。
”知的生産法”というタイトルから、大学教授として多数の本を出版している著書の、近代的な仕事術が書かれていると想像したが、実に昔ながらの、しかし長年の経験から編み出された職人的な仕事のスタイルは、最新の仕事術や勉強法がベストセラーとなっている今では逆に新鮮かもしれない。
対象全体をきちんと見渡しましょう。
★★★★★
「現場主義」を実践するとはこういうことか。
本書では、一生付き合う心構えも必要とされる地域産業調査を手掛ける
著者が自らの手法を紹介します。
仕事で営業前調査や業界研究などを手掛ける私にとって、以下の点が役
に立ちました。特に、全体を見渡すことですね。
・現場主義を因数分解すると、
「自分で実感すること」と「自分の言葉で表現すること」に分かれる。
・情報収集は、全体を見渡しながら地道に蓄積する
→相手の話したいこと、思っていることを引き出します。なお、経験に
より見えてくるものが違うのは「最初は仕方が無い」として、著者は
わからないことはどんどん聞いていくしかないと助言しています。
→相手に応じて話を変えていっても、全体の話を大きくすれば共通する
ものになるので大丈夫です。全体をきちんと見渡しましょう。
・執筆は、平明さが一番。「思いを込めて」書く。
→ガールフレンドが読んでもわかるものでなくてはならない、とのこと。
もし居なくても、一晩寝かせて音読することで、だいぶ対応できます。
現場にとけこむフィールドワークの方法
★★★☆☆
「知的生産法」ときいておもいだすのは 梅棹 忠夫 の「知的生産の技術」,川喜田 二郎 の「発想法」,野口 悠紀雄の「「超」整理法」などだが,この本はこれらと共通しているところもありながら,だいぶちがう.パソコンもデジカメもつかわない古典的なやりかたは梅棹などにちかいが,B6 カードなどをつかって整理することはやめて,B5, B6 のノートをつかっているという.これらのノートから,いきなり本を書くのだという.
この本におもに書いてあるのはそういう情報の整理のしかたではなくて,「現場」つまりフィールドワークでのふるまいかた,ひととのつきあいかたなどが中心である.梅棹や川喜田の本もフィールドワークの方法を書いていたはずだが,内容はずいぶんちがう.おなじフィールドワークをするのでも,外部からみるのと内部にとけこんでみるのとのちがいだろう.