世界地図に萌えろ
★★★★☆
国境を接するA国とB国があって、B国の中に小さなA国の領土があるといった、地図製作者を悩ます「飛び地」ばかりを取り上げ収録した、地理・歴史マニアには失禁ものの本。実際にセウタやジブラルタル、ウォルビスベイに行ったことあるだけに感動すら覚える。「タモリ倶楽部」に企画書出したいくらい。
国境線の画定は近代国家にとって大命題だけど、飛び地のようなそれが綺麗に片付いていない例をたんまり見せられると、国境とは、民族とは、歴史とは、とかスケールのでかいことを考えさせられる。
タックスヘヴン(税金優遇)で潤うジブラルタルやセウタ、周囲より明らかに潤っていた昔の香港やマカオ、西ベルリンなんて例は稀で、飛び地に住んでても良い事なんかほとんどない。本国との往来は隣国との関係次第で封鎖されるし、下手したら真っ先に攻撃を受ける。飛び地を維持するために本国も多くを負担する羽目になる。何と200ヶ所以上互いの領土が入り乱れてるインドとバングラデッシュ国境付近のクチビハールという地域なんか、陰惨極まりない......。元を辿れば飛び地は超大国の横暴な駆け引きが引き起こした悲劇とも言え、今なおそれらが残っているという事実そのものが、彼らの罪深さを物語っているなあと思う。
飛び地に歴史あり。
★★★★★
大全の名前を名乗るだけあって有名どころの飛び地、カリニングラードから
一日だけユーゴスラビア領だったロンドンのホテルのようなミニ飛び地まで
ありあらゆる飛び地が記載されています。
それぞれの飛び地の関して丁寧に所在地、その誕生過程や現状など細かく解説してあり
読み応えは十分です。
国マニアとかぶるところも多いので国が好きなら「国マニア」のほうがお勧めです。
学校では教えてくれません。悪しからず。
★★★★★
何故飛び地が存在するのか、という問いかけに対してこちらではそうした色々なパターンを紹介しながら答えてます。
もっとも後書きにそのパターンというか、傾向を箇条書きにしております。
あらゆる政治的バイアスがかかっていないのが、この本並びに、前著『国マニア』でしょう。
とにかくマニアックです。
飛び地成立の背景にある政治的・文化的ドラマがツボ
★★★★★
昔から地図を眺めるのが好きだった私にとって、好奇心のツボをピンポイントで刺激してくれた本。だってテーマが飛び地ですよ飛び地!「飛び地」だけについて書いた本がこの世のどこにありましょう。目の付け所が素晴らしい。この本のすごいところは、単なる地図上の飛び地の網羅にとどまらず、(おそらく相当の)マニアである著者がその政治的・文化的な背景・ドラマを読者が納得する程度まで詳しく解説してくれているところです。地図も地名のアルファベット表記もちゃんとついています。
テーマは一見マニアックですが、読めば誰にでも「へ〜!」と言わしめるような話ばかりです。「国家」「民族」といったことに興味を持つきっかけにもなると思うので、大学生・高校生にもおすすめです。語りかける文体と説明文的な文体の混じったユーモアのある独特のスタイルも事典というよりエッセイのようで、個人的にはツボです。
文体くらい統一してください
★★☆☆☆
項目によって、場合によっては同じ段落の中ですら、「である」と「ですます」が混在している。
これが著者の「味」だというのなら別にいいのだが、全体的に文章校正も甘く、とにかく、私はその辺が気になってしょうがなかった。
内容についてはそれなりに興味深い。
詳細な地図も多く、持っているだけでデータベースとして役立つ。
だが、上記のような理由で、そのデータも本当に正しいんだろうか、と疑いたくなるのが残念。
また、同著者の傑作『国マニア』に出てきたネタも多く、あの本を読んでしまってからだと新鮮味はかなり落ちる。