オウム真理教の犯した罪を考えれば、麻原が死刑になるのはやむを得ないと思うけれど、裁判である以上、どんな悪事をしたから死刑になるのか、明確にされなければならない。でも実際の麻原裁判は、証拠も事実認定も非常にお粗末で、魔女裁判と同じだと告発する。死刑という結果が同じだからといって、経過をはしょってしまえば、法秩序は守られないという著者の指摘は、あたりまえすぎるほどあたりまえだ。裁判を巡る状況は、オウムを社会の中から排除したいという意思だけが働いているように見える。排除さえすれば、いいのか？　再発を防ぐために、何もわからないままでいいのか。

マスコミは麻原裁判の内容をきちんと伝えず、あたかも弁護団が引き延ばしを図っているかのような一方的な報道に終始した。だが、麻原裁判にはまだ多くの重大な未解明点が残っている。重大な裁判であるからこそ徹底的な真相解明を目指した弁護士の良心の声を聞くべきだ。