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観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

価格: ¥714
カテゴリ: 新書
ブランド: 新潮社
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観光に遊んだ江戸庶民と寺社のつながり ★★★★☆
江戸の人々は花見の名所や近郊の名刹への小旅行など
観光娯楽を積極的に生活に取り入れ、楽しんでいた様子が具体的に紹介されている。

また資金集めと信者獲得を目的に、江戸で出開帳を行う有名寺院も多かったが、
集客のため様々な営業戦略が練られ、次第に娯楽色が強くなっていった。
一方でせっかく出開帳に来たのに天候や流行病に祟られ赤字となった失敗例もあった。

大名屋敷の中に領国から分祀された有名神社に、もの珍しさから庶民が集まり、
結構な収入が上がる例もあった。困窮した大名家が相次いでそれを真似たらしい。
その中でもしっかり庶民に根付いた神社は、今日まで存続している。

江戸の名所や有名寺院を巡る当時の娯楽ビジネスの実態がよく解説されている。
当時の文献の紹介も、丁寧な現代語訳が付記されており分かりやすい。
また現代に残る江戸文化の痕跡を辿るのにも役立つ書である。
現在にもつながる?江戸の観光地と戦略 ★★★★☆
主に江戸時代後期の史料を題材に取り上げて、観光地としての江戸の実態を分かりやすく書いた本です。
現在の日本では、京都のように他地域から観光に来てお金を落としてもらい、地元の人は地元の観光地を余り知らなかったりすると言うのが実態ですが、江戸の場合はもっぱら地元需要をあてにしている点が現代とは異なるなと思いました。一方、「出開帳」は他地方の寺社仏閣の宣伝、財政救済のために賽銭を目当てにして地元から神社仏閣を勧請して大名屋敷を開放する大名達、また、江戸の庶民にアピールするために観光地開発をした徳川吉宗など、現代社会でもありそうな悲喜こもごもの観光事情に思わず苦笑します。
しかしこれらの観光ブームも、参勤交代に代表される徳川幕府の強権的政策の上に成り立っていた物であり、幕末になると江戸の観光は終焉を迎えます。一見楽しい遊興である「観光」も政治に左右された現象であることを教えてくれる本です。江戸好きの人ならおもしろく読めると思いますが、江戸観光と徳川幕府の政策が如実に関係しているのをよりいっそう知りたい方は同じ著者の『徳川将軍家の演出力』も読まれるのをお奨めします。
労働都市から観光都市そして再び労働都市へ ★★★☆☆
 江戸八百町のとらえ方は様々である。「将軍様のお膝元」として首都の基盤整備がすすむ1600年代の「建設労働都市」という性格。元禄文化から化政文化の間が、講やおかげ参り、出版、浮世絵によって引き起こされた「観光都市」としての性格。次に地方の飢饉、囲い込みから失業者の目指す「浮浪労働者の都市」という性格。この流れの①と②の中央部分を実例でわかりやすく紹介解説されている。「江戸の花」の部分である。しかし物足りないのは③の部分へのつながり。今、私たちが足を運んで確認出来る江戸情緒は、最後の部分の光を失いつつあった江戸文化なのだから。
成田山は「メディアミックス」を先取りしていた? ★★★★☆
最近多い「江戸時代の観光事情」に関する本。

なかでも「江戸とその周辺」を対象にしているのだが、観光する側ではなく、「受け入れる側」からの視点が面白い。
例えば成田山などの地方のお寺が、メディアへの露出や影響力のある人物へのPR活動をするなどして、「ご開帳」をたくみに成功させる姿などは、現代の観光マーケティングにもつながるところがあるだろう。
また、大名諸家が自分の屋敷内に地元の神様を勧請して、江戸の市民を受け入れて財政の足しにしていたなんてことは本書で初めて知った。やりすぎで幕府にとがめられるところもあったりして、大名家も大変だったんだ、と思わずにいられない。