この本はそういう本ではありません。どちらかというと、気軽に小説家になろう（なりたい）なんて思うな、という内容の本です。小説を読むのが好きで、書いてみたいと思う人が読むのにはすごくいい本だと思いますが、「小説家」を目指す人が読む本ではありません。
リョサ自身の創作に対する考え方、とりわけ目を引いたのが創作がいつの時代も自由であったわけではない事実、その辺りが非常に面白いです。
技巧に対することは一切書いてありません、「私でも小説家になれる志望」に対する警句にしか見えません。

作家志望の読者に対する手紙の返信という体裁を採っている作品。新潮２月号に掲載された木村栄一の盟約が単行本になった。愛情溢れる文章で事細かに文体から登場人物の設定に至るまで巨匠の秘伝が盛り込まれている。文学理論的観点から読んでも、面白い。

小説家志望の若者に向かって語り掛けているという形だが、とりわけ強い印象を与えるのは、作家として生きることのいわば覚悟について語っている部分だ。

文学を仕事にした者は生きるために書くのではなく書くために生きるのだ、そのためにほかのすべてを犠牲にすることだ、文学の奴隷になることだ…ということを基本的な態度として求めるその覚悟には圧倒される。 ”現代文学最高峰のひとり”の内面だけがもつ厳しさを感じることができる。