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小説の秘密をめぐる十二章 (文春文庫)

価格: ¥550
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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<書きたいこと>は精神との関わりにおいてしか見つからない ★★★★☆
1987年から芥川賞の選考委員を務める河野多恵子が小説を書こうとする新人に向けて贈る12の小説の秘密。2001年「文学界」に連載した「現代文学創作心得」の改題。「文学作品は生き物であり、書きはじめた作品は必ず完成しなくてはいけない。書きたいものと書きたいこととは丸でちがう。書きたいものとしてだけで書くのであれば、ただのお話にしかならない」 作家の基本条件としての才能の有無、創作ノート、名前・標題のつけ方、導入と終わり方、筋と技巧、人称、譬喩などについて多彩な例を挙げ、次々に秘密が手ほどきされる。私にとって特に興味深かったのは、p.220から221にかけての「詩は俳句・和歌と共に、本質的には自分自身のためのものである・・・小説は作家がそれを書く目的上読者に分られ、共感されるように創られるべきである、読者もまた分り、共感できることを期待するものである」という部分である。『羅生門』の最後の一行、『金閣寺』の自転車の前燈などの指摘には、溜息が漏れた。これほど説得力のある創作心得を読むのは初めてである。本書は同時に谷崎潤一郎の解説書としての側面も持ち合わせており、魅力は尽きない。
育ち続けるであろう一冊。 ★★★★☆
私の持っているこの文庫は、買って二週間もしないうちにえらい汚くなってしまった。
それと言うのも、あまりにもハッとさせられたり、重要だと思う箇所が多すぎるから!思わずマーカーを引いている、書き込みをしてしまう!!
おそらく、私はこれからもこの本を開くたびに汚し続けるんだろうなあ。
谷崎作品の解説書? ★★★☆☆
全体的には面白く読めましたし、小説の秘密(というほどでもないが)にまつわる興味深い話も何カ所かに散見されました。しかし、谷崎潤一郎の作品がやたらに出てくるので、谷崎作品の解説書として出版したほうがよかったのではないでしょうか。それに著者はいわゆる大衆文学を一段低く見ているような気がします。これからは、いわゆる純文学と大衆文学を区別する時代ではありません。次回、著者には、これまで大衆文学の範疇に入れられていた作品を採り上げて「小説の秘密」を書いてほしいと思うのですが。
芥川賞審査員が書く小説創作心得、ユニークな指摘が多い。 ★★★★★
 本書を読んでから2年たつが、私が一番印象に残っているのは第2章「創作事始め一 文章の呼吸とは何か」である。この章の中の「よい文章は健康な脈搏を打つ」という言葉は時間がたつと共に益々実感される。読みやすい文章はリズムが良い。呼吸が良い。文章を書くときは頭のアイデアを並べるだけでなく、最後に文章の呼吸・リズムを整えないと読みにくい。このことを端的に表わしたのが「健康な脈搏」という言葉だと理解している。
 そのほか、第4章「書きたいことを書く」というところで、モチーフをそのまま書くのではなく、「自分の精神と切り結んで」書くことの重要性を説き、自分の作品を失敗作として例示しいるのも興味深かった。

 また第12章で、作家は一言で言い表せることが必要というのはユニークな指摘と思った。例えば円地文子は「女の業を書く作家」、津島佑子は「シングルマザーもの作家」という具合にである。
 以上の他にも独特の観点からのアドバイスが多く、小説家になるとは思わなくても、小説を読んだり文章を書いたりする上で有益であった。

文章を立ち上げること ★★★☆☆
 「実を言えば、よい小説の書き方が本当に分かるのは、よい小説が書けた時なのである」。「文章上達の下地作りをしたいならば、本くらいは自分で択んで自分のお金で買わねば、同じ読むのでも碌に読んだことにはならない」。昔、ある物書きが電車の中で、エンジニアの友人から「谷崎潤一郎という人は、ずいぶん偉いらしいが、どういう小説家なんだい」と訊かれて、「女の足のこればっかりの小説家」と、(片掌を頂くように上下させて)そう一言で特徴を答えた。その物書きが後輩の河野多恵子に語っていわく、「つまり、そのように一言で言い表わせる作家でなければ、本当にはやってゆけないんです」。

 図書館で借りてきた本だから、どうせ碌に読んだことにならないと割り切って拾い読みをしていたら、最後の方(最終章「文章力を身につけるには」)で究極の言葉が出てきた。

 ──白洲正子の『いまなぜ青山二郎なのか』に「骨董は買ってみなければわからない」「骨董いじりは女道楽より高級でも下等でもない、と青山さんはいっている」「男の眼を持たなければ陶器はいつまで経っても伊万里のそば猪口を出ないだろう」とあったのを思い出す。骨董いじりと女道楽と文章。いずれも男の眼を持たなければならない。それというのも、保坂和志(『書きあぐねている人のための小説入門』)によると「小説を書くということは……何もないところから自分の文章を立ち上げていくこと」なのだから。