ひとりの女性(麻生久美子)が海難事故で行方不明になり、遺体があがらないまま葬式が行われていく。そして、その場に集まった小学校時代の同級生や恋人などさまざまな若者たちが、次々と彼女との思い出を回想していくのだが…。
それぞれのキャラクターの記憶から、はじめ不確かだったひとりの女性の真実の姿が次第に紡ぎ出されていくという、ノスタルジックだが決してそこに溺れてはいない青春群像劇の佳作。そのみずみずしくもリリカルな語り口と、現代日本映画界若手個性派俳優たちの競演が見事にマッチ。『GO』で2001年度の映画賞を総なめした行定勲監督による劇場用映画第2作にして、初の公開作品(処女作『OPEN HOUSE』は2002年春現在、未公開)となった。(的田也寸志)
気持ちはニュートラルで
★★★★★
'02年度作品ですから発表から8年経って観たわけですが、やはりこういった題材は不変的だとまず感じました。
どなたかが随分粗探しされてましたので幾つか反論させてもらいますが、大して仲の良くない同級生朋美の葬式に難癖つけながら多くの者が集まる事への疑問。これは町中皆顔見知りという小さな町の学校ならではの事で、これを契機に同窓会的に集まるのも何等不自然ではありません。
また内気な小学生時代の朋美を「ひまわり」と形容したのは語彙の少ない小学生ならではとも言えますし、実際輝明にとっての朋美はそう写ったのかもしれません。
そして何より朋美を演じた麻生久美子の映画女優としての魅力。一昔前の主役級が自分のカラーを押し出したのに対し、彼女は朋美同様カメレオンのように作品に合わせ様々な顔を見せる希有な才能の持ち主に思います。。日本映画が新たな時限に入ったのと同時に誰もが彼女を使いたがるのも解る素晴らしい女優さんです。
最期の日元カレにメイクしてもらい鏡を見続けるシーンや輝明と真夜中の海岸で満開のひまわりを見る彼女の姿は何でもないのに胸に詰まります…
最後に女性は男ほど初恋を引きずらないと言う意見、これは違います。大半の女性は前に進みながらも自分が初めて好きになった人の思い出を大切に胸にしまい込んでいるのではないでしょうか?朋美の気持ちが最後輝明に届いてよかった…こういった作品は粗探しせず心をニュートラルにして観たいものです。
袴田さんの繊細な強さが光ります
★★★☆☆
全体的にノスタルジックな少年期の回想録。
まったり具合は邦画特有で和みます。
が、確かにこんなに沢山の登場人物がいなくてもいいかも?と思ってしまうのも事実。
主演の袴田さんの個性ある繊細な演技が素敵でした。
初恋という名の幻想
★★☆☆☆
他人の書いた本の映画化を得意とする監督と、自分の書いたオリジナル脚本でないと真価を発揮できない監督。行定勲をあえてカテゴライズするならば、おそらく前者の方に分類される。『GO』や『世界の中心で愛を叫ぶ』で見せた演出のキレは、残念ながらこのオリジナル脚本のデビュー作で発見することはできなかった。
そもそも大して仲の良くなかった小学校の同級生が死んだくらいで、昔の友達5人組がそろって田舎に里帰りしたりするだろうか。同級生の死を言い訳にして、現実社会でのうっぷん解消のため昔話に話を咲かせているようなイヤラシサを、この5人組には思わず感じてしまう。
生前、大人になってから朋子が関わった5人の男たちが、それとは別に登場するのも不自然だし、第一人件費の無駄遣いである。この男たちを登場させるのだったら、袴田以外の同級生を登場させる意味があまりない(特に女3人は本編でまったく機能していない)。ごちゃついた人物相関は、単なる映画の時間稼ぎとしか思えない。
どうみても<夕顔>にしかみえない根暗な女の子を称して無理やり<ひまわり>とタイトリングするセンスもいかがなものか。あんなにマセた恋のかけ引きをする小学生も、観客の神経を逆撫するだけである。初恋の人が一番好きだったというのは、男が抱く幻想であり、男よりもよっぽど現実的な女が20年も前の恋を引きずっているわけがないのである。
行定監督のなかで1番好き
★★★★★
まず役者さんがそれぞれ個性的で、尚且つテクニカルです。まずそこが見所だと思います。確かDVDに行定監督のインタビューも入ってて充実しています。監督の言いたい事(書いてしまいたいけど観てください 笑)がはっきり伝わってくるレベルの高い作品です。
こんなレビューを見るより作品見ちゃったほうが早いです 笑 そのぐらいおすすめの映画です。
贅沢な骨が好きな方はきっと大好きになれる作品だと思います。
伊東の浜辺がブルターニュに見える
★★★★☆
ちょっと大胆な事を書きますが・・
「性依存症」なる精神障害がありますが、朋美にはその傾向があったのじゃないかと思います。
実らないどころか「汚い」と言われた苦い記憶が残った初恋の思い出の反動なのか、
愛を希求し、多くの男性と関係を持ってしまう悲しいヒロインでした。
ありがちなテーマ、幽霊がいつ現れても不思議ではない日本の文化等々見どころはてんこ盛りです。
どの役者さんも感情を抑制した演技を披露していました。
そこが一番良かったですね。