橋本治渾身のシリーズ第三巻。花の宴（はなのえん）、葵（あおい）、賢木（さかき）の三帖を収録。

「花の宴」は源典侍という宮中に仕えるかくしゃくとした恋多き老女と、それにちょっと悪戯心が湧いた光と頭の中将との不思議な友情から始まるが、しかし花の宴行われた宮中で、光に運命を与える女、「朧月夜」との出会いが描かれる。

朧月夜は光の「政敵」弘徽殿の女御の妹であり、光にとっては禁忌の女性。しかし、それでも契りをし、また逢うために、扇を交換する。

その後右大臣邸で藤の宴が開かれ、光は宴に訪れる。酔い疲れたとみせて朧月夜を探しに女たちの集まる寝殿に赴き、そして、ついに見つけた。彼女は春宮に嫁ぐ予定の六の姫、やはり禁忌の娘だった。しかし、光はためらわず進んでいく―⡊??!!。

「葵」では、正妻葵上と六条の御息所の車争いがあり、御息所の無念から生じた生霊が光の子を妊娠している葵の上を襲う。葵の上は男児を出産し、夫婦のありようを始めて夫妻で確認したのもつかの間、死んでしまう。

妻を失った光と左大臣家との別離は、大きな政局の変動も伴った。――弘徽殿の皇太后の力と右大臣家の隆盛。桐壺の上皇と藤壺の中宮、そして、禁断から生まれた皇太子。桐壺の上皇より、光は皇太子の後見を任される。
そして、葵のあとの、「紫の上」の誕生。

光という特殊な男は、女にも男にも考え付かないようなことを考える。家族を持たないこの男は孤独と孤高のうちで、美しい。美しいことは力である。しかし、まだ若い傲慢も併せ持った美しさはやがて破局を迎える。

「賢木」で、父桊??!!壺の上皇が無くなり、藤壺の中宮は髪をおろし、尼僧になる。

ひとりで皇太子を後見する光の、美しさは傲慢となった。光は朧月夜のところに通うのをやめず、ついに右大臣邸で、右大臣に逢瀬の現場を見られてしまう。堂々と、不敵にも艶やかな笑みをたたえて――。

そして物語は光の運命をのせて、第四巻に続く。