名作であることに間違いはない
★★★★☆
作家の個性とは何か。 綾辻先生にとってそれは「本格」であること。 しかし本格の定義とは? 後書きで先生は自分にとっては「雰囲気」であると記してあります。 今回の物語は今までのシリーズの中でも突出して幻想と怪奇に重きが置かれ独特な視点と語りによって読者を暗黒の闇の中へと引きずりこみます。読者の中には幻想が本格を食っているという意見もありますが、前述した作家のスタンスを鑑みれば寧ろ真っ当で丁寧な作品であると私は思います。 ミステリー小説である前にこの物語は小説なのです。 本、本来の楽しみ方を「本格」という言葉に縛られず広い心で楽しみたいものです。 そういう意味で私にとって暗黒館は綾辻先生の作品の中で最も洗練な印象を受けました。 トリックに厳密さのみを求める人には向きません。シンプルに暗黒館の世界に没頭したい人には最高の一冊かもしれません。
枷
★★★☆☆
4巻のレビューですが、暗黒館を一つの作品として評するのが妥当かと思いますので、1〜4巻を通じてのレビューだと思ってお読み下さい。 綾辻氏と言えば叙述トリックですが、今作ではそれが『枷(かせ)』となってしまっているように思いました。 つまらないわけではないのですが、今作のやり方はかなり無理矢理な気が…… 十角館や迷路館よりは、人形館に近いテイストのように思います。 私は十角館や迷路館の方向性が好きなので、この評価となりました。
そして、新たな謎が・・・
★★★★★
謎解き編の第四巻。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ページをめくるごとにスッキリしていきます^^
そして、まさに「人に歴史あり、館に歴史あり」という大団円を迎えます。
・・・が、続きが気になることだらけじゃないですか!綾辻さん!
これを読み終わると、もう一度『十角館』から読み返したくなるのは必定。
なるほど、今度はそうやって時間稼ぎをする気ですか(笑)
またどこかで暗黒館のその後を書いてほしいと、切に願います。
奥様が『魔性の子』を書いたように、外伝的な形でもいいですから。
4巻通して読み終えての感想ですが、「みんないい具合に記憶を失いすぎ」などのご都合主義を差し引いても、広げまくった風呂敷を綺麗に畳み込んだ手腕には素直に脱帽です。
余韻の残し具合も良い感じ。
館シリーズでおなじみの人びとがみんな出て来ますし、それぞれに新事実が盛り込まれていますので、またシリーズを読み返したくなります。
そういう意味でも「おいしい」作品です。
ただ、1巻のレビューにもチラッと書きましたが、これまでのシリーズのような「手に汗握る恐怖感」は薄いかな、と思います。
それはひとえに、登場人物が基本的に「いい人」ばかりというのも原因かと。
もっと救いようの無い、悪意に満ち溢れたドロドロの展開にするのもアリだったのかな・・・とも思いましたが、この原点から、今後のああいう事件へと繋がっていくことを考えると・・・。
そっちの方が怖いですね・・・。
何だか奥歯に物が挟まったような書き方しかできませんでしたが、読めばご理解いただけるかと思います^^;
間違っても最初に読まないでください。
★★★★★
十角、水車、迷路、時計、黒猫、(人形?)。
少なくとも5つの館シリーズを読んでからではないと、意味や前後関係が分かりません。各館シリーズで謎が解き明かされた上で、この暗黒館が成立します。最後のあっと驚くトリックは仰天ものです。猿の惑星シリーズみたいに、このあと十角館に帰るような「新館」が出るのか、それとも大作なので作者がしばらく充電するのか。
館シリーズの集大成でかなりの読み応えがあります。そして、すべて分かったところで征服感と同時にこれで終わりではないかという虚無感が起こります。
次のシリーズ、絶対期待しています。
K-Booksellers
★★★★★
思い起こせば、「本格」なるジャンルを知ったのは『十角館の殺人』でした。あれから20数年、本書を読んでみて改めて感じたのは、その創作スタンスが全く変わっておらず、そしてクオリティが落ちるどころか、上昇し続けている事。他の追随を許さない才には、戦慄すら覚えます。
おサルの本屋
★★★☆☆
全4巻からなる『館』シリーズ第七作です。とりあえず、今までのシリーズを読んでから読まれることをお勧めします。
今までのものと比べると、ややホラーっぽい印象を受けますね。好き嫌いは分かれるかもしれません。私は楽しませていただきましたが…。
にしやまの本だな
★★★★☆
文庫本4巻で2000ページを超える、大長編本格ミステリ。
12年ぶりの「館シリーズ」です。
約1ヶ月をかけて、ようやく読み終えました。通勤以外の時間も使って、これだけ集中的に本を読んだのは久しぶり。
◆4巻目の後半3分の2ぐらいは、ほぼすべてが解決編。
いくつもの謎が、一つずつ明らかになっていきます。
さすがにこれだけボリュームのある話だと、解決すべき謎の数も半端じゃありません。
自分がいちばんスッキリしたのは、謎の「太字の独白」の正体が分かったことかな?
これから1巻を振り返って、伏線探しをしてみようと思います。
◆これを読み終えると、館シリーズ1作目の「十角館の殺人」を続けて読みたくなりますね。
本作と同時に、十角館の「新装改訂版」を出版するとは、憎いですなぁ。
◆ところで、「優秀な医師」の正体は、やはり……ですかね。
(2007/11読了)
あんしゅの本屋さん
★★★☆☆
逆転に次ぐ逆転、そして美しき破局(カタストロフィ)華麗にして精緻。綾辻ミステリの真骨頂!血塗られた浦登家の系譜を受け継ぐ者は誰? 漆黒の館を包み込むのは断罪の炎か。逆転に次ぐ逆転の果て、とうとう事件の真相は明らかになったかに見えたが……。空前の本格&幻想(ゴシック)ミステリ巨編2600枚、ここに堂々の完結!恩田陸、京極夏彦、宝野アリカ、奈須きのこ各氏の「特別寄稿」を収録の最終巻。しかし、館は構築され続けなければならぬ。主人公は罠に満ちた館を訪れ、悲劇を体験しなければならぬ。高すぎる代償を払ったのち、いくばくかの真実を手に入れ、館を訪れる前とは異なる人間となって館を去らなければならぬ。これは何かと似ていないだろうか?――<第4巻巻末に収録の「特別寄稿 暗黒館の諸相」より抜粋>