完全に『物』として扱われる少年・少女たち、徹底的に醜く邪悪な存在として描かれる加虐者たち。SM行為における精神性を強調する向きは多いですが、この『ソドムの百二十日』を読み進めながら感じるのは逆に「精神の不在」です。延々繰り返される哲学談義・社会論も、非道な拷問の正当化に使われるばかり。拷問・哲学、拷問・哲学の悲惨なサンドイッチです。それが延々700ページ続きます。
決して誰にでもお勧めできる本ではありません。『悪徳の栄え』や『ジュスティーヌ』だけ読んでもサドの作品の雰囲気は分かると思いますので。実際どれを読んでも書いてある事は同じです。
しかし、サドの精神の真の恐ろしさを理解するためには、その『同じ事』を700ページ分繰り返し読む事が必要です。繰り返し、円環、徒労、そこに現れるサドでしかない精神・・
真のオリジナルと呼べる数少ない作品のうちの一つ。ゆえに☆5つです。