純粋に楽しみましょう
★★★★☆
少年探偵シリーズにおける本作の位置や意義は他のレビューアーの通りですが、子供の頃、
小学校の図書室でむさぼるように読んだ人も、そうでない人にもオススメできます。
昔読んだ人には懐かしい挿絵が郷愁を誘います。初めての人にも、肩のこらない娯楽小説として楽しめます。
つまり現代の読み手がプロットやトリックを云々するのでなく、純粋に楽しむ読書のための良書です。
読み継がれるもの
★★★★★
本作が少年倶楽部に連載が開始されたのは昭和11年1月。七十年以上も昔だ。
だから文章も最近の小説ではまずお目にかかれない「ですます」調だし、独特の言い回しや何とも言えない古臭さが漂い、ストーリー展開やトリックも所々稚拙ささえ感じてしまう。
だが、それがとても良い。
古臭ささも稚拙な面も文体も全てが相まって、読者を一気に昭和初期へと誘ってくれる。
「稚拙」と表現したが、それは作品が劣っているということでは絶対にない。戦前の日本、子供たちの読み物として様々な制約が厳しかった時代(実際本作も「怪盗二十面相」としたかったが「盗」の文字が青少年に悪影響を与えるとして仕方なく「怪人」としている)にあって、よくぞここまでワクワクさせる作品が書けたものだと感服してしまう。
また少年探偵シリーズは推理よりも「冒険活劇」に重点を置いており、いわば昭和初期の「ドラゴンボール」的存在だった。
そんな作品を発表当時のままの文章で読めることは非常に幸せだ。ぜひ次世代へも残していきたいと思う。
♪ぼ,ぼ,ぼくらは少年探偵団…♪
★★★★★
懐かしいですね。
子どものころ「少年探偵」シリーズに夢中になった人も多いと思いますが,当時のままのイラストと表現内容で再刊されたのはうれしい限りです。
このシリーズは,乱歩の一般向けの作品をベースにしているものが多く,大人の目から見ると,巻を重ねるにしたがってクオリティが落ちる印象は否めません。しかし,かつて,小林少年率いる少年探偵団と二十面相の息詰まる対決に心を躍らせた少年は多いはずです。少年たちの心をがっちり捉えたからこそ,長寿シリーズたり得たと思います。
本巻は,その記念すべき第一作目で,宝石を狙う二十面相と小林少年・明智小五郎の駆け引きが存分に楽しめます。
改めて読み返すと,少年の日の思いが蘇ってくるようです。
古き良き昭和の息吹をも感じさせてくれ,懐かしい思いにさせてくれる一冊です。
怪人との戦い
★★★☆☆
ポプラ社が大人向けに出し始めた「ポプラ文庫クラシック」の一冊。
粗製濫造の印象が強い「少年探偵団」シリーズだが、『怪人二十面相』は、まだ許せるレベルにある。それでも、見え透いたトリック、間抜けな名探偵・怪盗にいらつかされる箇所は少なくないが。
挿絵などもきちんと収録されており、子どもの頃に読んだ記憶と摺り合わせながら楽しみたい人にはおすすめ。
懐かしいの一言
★★★★★
もう、懐かしいの一言。
小学校時代、学校の図書室でこのシリーズを読み漁った。それが、自分の読書人生を決めたといっても過言ではない。このシリーズと、テレ朝の土曜ワイド劇場で今は亡き天知茂が明智小五郎を演じたテレビドラマが大好きだった。
しかし、当時の表現って、今だったら、差別表現として言葉狩りにあいそうだ。
このシリーズ、あと5冊出てるのでそっちも詠んでおこう。ルパン・シリーズも出してくれないかな。