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狼花―新宿鮫〈9〉 (光文社文庫)

価格: ¥960
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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ようやく共感できるヒロインが登場。対照的に男の滑稽さが浮き彫りに ★★★★★
これまでのシリーズのヒロイン達は、男の都合のいいように偶像化された
一言で言えば共感できない薄っぺらいキャラクターだった。

だが狼花は違う。生々しく、男たちをしたたかに利用し、男達の矛盾と欺瞞を

鋭く突く、「強く凛々しい」生き様のヒロインである。さらに言えばその生い立ちから

日本と日本人の欺瞞と矛盾も指摘している点も評価できる。

男にとっては憧れにもなりえるような悪役、仙田の無様とさえいえる本性と

惨めな末路は、その化けの皮が本作のヒロインによって剥がされた典型ではないだろうか。

実社会に男達が妄想するようなカタルシスなどは無いのだと突きつける傑作

ヒロインに共感できない、と言っている者は、それだけ妄想に浸りきって生きてきた
のだろう。日本の病巣を垣間見る思いだ
惜しい作品です。 ★★☆☆☆
数年ぶりに再読してみました。
香田警視正、仙田との対決を中心に描かれており、
最後まで一気に読ませる迫力のある展開が非常に面白い。
また、多様化する外国人犯罪の抑止を背景にした現代の闇を鋭く表現出来ています。

しかし・・・
新宿鮫シリーズには、倫理感やその生き様が魅力的な女性が数多く登場していますが、
本作の明蘭は作品の進行上、非常に邪魔に感じてしまいます。
まるで勘違いでもしているかのような、彼女視点の描写は読むに耐えません。

ある事件をきっかけに公安を離れ、鮫島と真っ正面から対決する香田警視正。
本作は、そんな香田警視正からの視点を中心に仙田を絡め、スピンオフ的に進めても面白かったかもしれません。
旧来の新宿鮫ファンにとっては評価が二分している作品。
未読の方は1作目、炎蛹、氷舞、風化水脈あたりを読んでおくと更に楽しめます。
鮫島の「敗北」を描いた物語 ★★★★☆
評価がくっきりと分かれる作品である。

新宿鮫は、そもそもが鮫島という犯罪者に敢然と立ち向かうカッコイイヒーローの物語だったのだが、この「狼花」においては、ヒーローである鮫島はもはやいない。
この物語の「主役」であり「勝者」は、明蘭という中国人の女犯罪者である。「女」で、「中国人」で、「犯罪者」なのである。
仮面ライダーでショッカーが勝ってしまうようなものだ。
「納得いかねーぞ!」と文句を言う人の姿が見えるようではないか。

しかし作者は奇をてらってこんな物語にしたわけではあるまい。むしろ逆であると思う。
あまりにも複雑になりすぎた新宿という闇に、鮫島はもはや打ち勝てないのである。新宿がヒーローを拒絶し始めたのだ。
これはかつてアメリカンハードボイルドが陥った隘路と全く同じである。アメリカにおいて正統派ハードボイルドのヒーローは、ついに復活することはなかった。日本はどうやら、ようやくアメリカに追いついてきた(?)らしい。

果たしてこのシリーズはこれからどうなるのだろう。私にはバッジを外したハリー・ボッシュのように、新宿を去っていく鮫島の姿しか見えないのだが・・・。


大沢在昌の進化 ★★★★★
第25回日本冒険小説大賞受賞作。

単行本やノベルス判でのこの作品に関しては、賛否両論入り乱れている。
それだけ、このシリーズが愛されており、読み手がいろんな人に感情移入している証拠だろう。

私は、この「狼花」に大沢在昌の進化を見る。
確かに、「シリーズに一区切りつけたい」という思いありきという点が出発点であるように思えるが、
このシリーズが始まった頃からの日本の犯罪事情の変化を考えると、致し方ないと思う。
今度はどう衣替えして登場するのか楽しみである。
さて、進化についてであるが、
大沢在昌は、いろんな登場人物に自分の思いを語らせることが多く、
私は、彼の思いに共感することが多いのだが、
その思いがどんどん進化しているように思うのだ。
それが高じての、「シリーズを一区切りつけたい」ということになったということだろう。
それには、仙田と香田をはずすことはできない。
彼らに落とし前をつけずして、このシリーズは区切りがつかない。
そういうことだろう。
この本自体は、結末が性急過ぎるというレビューが多いようで、私もそれには同意するところがある。
ただ、作品自体のプロットはしっかりしているし、冒険小説協会大賞に恥じるものではないと思う。
やっぱり、小説は読んで面白いものでなくっちゃ。

私自身は、「新宿鮫」デビューが遅かったので、
かなり冷静に、距離を置いて作品自体を楽しめている。
鮫島にスーパーヒーロー的のものを求めず、人間くささを楽しんでいる。
そういうスタンスで読んで、面白いのだから、やっぱり面白いのである。

なにはともあれ、読んで見ることをおすすめする。