ソフト開発でも「ヒューマン・エラーの真実」は同じ
★★★★☆
航空機の事故は、機器のトラブルや人間による過失だけが原因で発生するわけではない。実は、組織や体制による潜在的なリスクも高いということが、本書を読むとよく分かる。JR西日本の社長が起訴された「JR福知山線脱線事故」もまたしかり。日勤教育の問題点が指摘されている。筆者は企業や組織自体が意識の変革を図り、エラー発生のメカニズムや発生時の対処方法について、現場の意見も取り入れつつ前向きに研究していく体制が必要であると説く。
ソフトの開発でも同じことが言える。ヒューマンエラーは起こるべくして起こるということを開発者は肝に銘じたい。ここでも「安全」は神話に過ぎず、エラーや攻撃を完全に防ぐことはできないが、少なくとも致命的な打撃を受けることの無いよう分析と対処を怠らないようにすべきだ。万全の体制をもってインシデントに対応できることこそ、今企業に求められている資質である。
本書に一つだけ、懸念があるとすれば…。
筆者は様々な航空機事故を分析し、どうすれば事故を防げるかについて考察、提案している。しかし、その考えが実際に現場に反映されているのかどうか、残念なことに我々には確かめるすべがない。よって、この本を読むと飛行機に搭乗するのが怖くなる。海外旅行の好きな方、海外へ頻繁に出張される方は読まないほうがいいかもしれない。
フライト中に読んだら恐くなりました。
★★★☆☆
飛行機事故は年々安全性が増しているということはなく、横ばいなのだという。
フライトシミュレータ好きのハイジャック犯がジャンボ機を操縦したという事件もありましたが、ハイテク武装した現代の航空機では逆に操作が難解で、ちょっとしたミスが大事故につながる危険性がある。
とくに昨今のリストラや経費削減に走る国内の航空会社の経営を見ると不安は募るばかり。事故やミスのノウハウをこの本のような形で共有できれば素晴らしいのだけど。
「ヒューマンエラー」をどう防ぐかの貴重な提言
★★★★☆
「ヒューマンエラー」という切り口から見た、飛行機事故のケーススタディといった趣の本。
飛行機のハードが発達する一方で、それを使いこなせないために事故が起こる・・・このようなことは航空業界だけでなく、あらゆるジャンルで起こっていることだ。
本書はあくまで航空業界に特化してはいるが、著者の、ヒューマンエラーを減らすための提言の数々は多くの人にとって参考になるだろう。
ということで十分興味深い内容なのだが、航空関係者だけでなく一般読者にも読ませようという意図のわりには、用語や説明が不親切だったりすることが多いように思う。
また、全体の構成をもう少し工夫して欲しかったのと、校正が少々甘いのも気になった。
飛行機に乗るのがちょっと怖くなる
★★★★☆
看護師として、医療事故を防ぐための知識をなにか獲られるのではないかと思ってこの本を読んだ。
そしたら、飛行機に乗るのがちょっと怖くなった。
本書の中では、飛行機事故の事例と著者による解説がいくつか出てくるのだが、
事故の事例の部分では、飛行機の運航にはこんなに人間的な要素が絡んでいるのか!と言うことがわかってきて、
次回自分が乗る飛行機の、機長と副操縦士の人間関係は果たして良好だろか?良好かどうかを誰か教えてくれないだろうか?
とか、
考えてしまった。
飛行機に乗るということは、その飛行機と言う乗り物と共に、その運転にかかわる人たちに命を預けるということなのだ、
ということが改めてわかったきがした。
ひるがえって、看護師としての私は、患者さんの安全を守る最も身近で重要なファクターなのである。
患者さんは、私たちに命を預けているのである。
本書の中で看護師としての自分の生かせるなと思ったこととしては、
ヒューマンエラーに対しては組織として取り組まなくてはいけないということと、
職場の人間関係はできるだけ良好に保たなければいけないなと言ううことと、
医療機器のインターフェースがミスを誘発し易いものだと思われたときには、改善を現場から提言して行かなければならないだろうな、ということと、
小さなミスを公にしてそれが大きな事故に結びつかないような対策を考えることの大切さや、
過去に起きた事故の事例等から傾向と対策を学ばなければいけないな、
ということなどがあると思った。
エラーの殆どは人間が関与
★★★★☆
前回、同じ著者の本で「機長の失敗学」を読んで感銘を受けたことがある。
現役の航空機機長でありながら、勇気を持って人間が起こすエラーについて分析し、その対処法に取り組む姿勢を訴えておられる。本書ではそのことがより強く表されているようだ。
安全意識に関する日本と欧米の違いなどが学び取れると同時に、そのことに対する安全哲学については、多くの同業種の皆さんが認識しなければならないだろう。
航空機事故に感心のある方、「機長の失敗学」とともに一読されたい。