稀代の名探偵、ヴィクトリア朝のイギリスを疾走する
★★★★★
推理力、ストイックな雰囲気、人気、相方との掛け合い、どれをとっても史上最高の探偵と言ってよい
シャーロックホームズの短編集です。
何度も映画・ドラマ化され(グラナダのジェレミーブレッドがマイベストです)、最近でもガイリッチーが映画化するなど時空も国境も越えて愛されるミスター名探偵の物語の中で、ボヘミアの醜聞、まだらの紐などの有名な作品12編が収められています。いずれも短く簡潔に起承転結が収められ、オリジナルなトリックと推理によって、何度読んでも飽きることがありません。(個人的には赤毛組合が一番良いと思っています)。
ミステリーが深く研究された現在の視点からみれば矛盾点がいくつかあるのも事実ですが
それすら想像力で補完して楽しむのがシャーロッキアンのたしなみというものでしょう。
科学捜査・帰納法・消去法を駆使してロジカルに犯人を推理するスタイルを確立し、またアクション
とストーリー性を兼ね備え、読めばビクトリア朝時代のイギリスの社会・風俗まで目に浮かんでくる
このシリーズが、聖書の次に読まれたというのは過言ではないと思います。
面白い。
★★★★★
名作なだけにかなり研究されているため矛盾点が目立つこの作品ですが、それを無視して登場人物(主にホームズ)の推理力を楽しむといいと思います。
個人的には世界的に評価の高い赤毛組合やまだらの紐よりもボヘミアの醜聞とオレンジの種五つが秀逸だと思いました。
史上初?キャラで読ませる小説
★★★★★
今回で3回目くらいかもしれないけど読んでみてまだ面白い。偏にシャーロック・ホームズのキャラクターの強烈な存在に尽きる。ポーも此処までいかなかった。あまりにも強烈な為、シャーロク・ホームズ自体が巨大なジャンルになってしまった。パステーシュやパロディ、研究書の数も膨大になってるのも凄い。同じ天才肌の探偵でもファイロ・ヴァンスみたいにイヤミにならないところが勝因かも。とても手の空いた医者が暇つぶしで書いたとは思えない。小林秀夫も無駄のない一種の名文と称揚してました。ヴィクトリア時代の英国のエレガントな腐臭が行間から立ち上ってくる。
話自体はそれほど凄いネタでもないようにも思えるけど、読んでる間はまことに楽しい。小説を読む悦びに満ちている。扱ってる事件の大半の理由が金か人間関係(男女関係が多い)で、この頃から人類があまり進歩してないか、それが人間の本質なのか、その辺を見抜いていたと思われる著者の慧眼にはやはり敬服するしかない。
これから100年後も同じように読まれてるに違いない普遍的小説。
今回は御大深町さんの新訳で嬉しい。解説も面白い。