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ケータイの未来

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: ダイヤモンド社
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あまりに夢のない未来 ★★★★☆
冒頭に 2020 年におけるケータイのつかわれかたをえがく 「小説」 が書かれているが,それを読んでいきなり,がっかりさせられた.そこに書いてあることは,研究レベルではいますでにほとんど実現されていることである.まったく夢が感じられない.しかし,著者はつぎのように書いている.「人間の基本的なライフスタイルや考え方は,半世紀単位でも思ったほど変わっていないように思える.[中略] 今現在の生活者である我々がピンと来ないものは,10 年〜20 年経ったとしても使われることはないのではないだろうか.」冒頭の小説はこのかんがえにもとづいて書かれたということだろう.通信インフラとして出発し i モードによって IT インフラとなったケータイだが,現在すでに,おさいふケータイがだいぶ普及し,つぎのステップはそれを「生活インフラ」にすることだという.日本ではまだクレジット・カードが普及していないというところに目をつけて,それをケータイのうえで実現しようという戦略はしたたかなものである.

本書でおもしろいところは,第 3 章におけるテレコム業界批判である.顧客ではなく「業界のため」を第 1 にかんがえる体質やをするどく批判し,それにたちむかったことで i モードを成功させたと自負している.また,WAP (ケータイ Web 標準) に関して,標準化会議における日本人の影の薄さを指摘している.また,技術の優位性こそすべてという「技術単独信奉」を批判し,FOMA においてそれが成果をあげたことをのべている.ほかにもおもしろい内容がふくまれているが,ここまでにしておこう.
DoCoMoの戦略を知りたい人には最適 ★★★★☆
NTT DoCoMo執行役員がDoCoMoの戦略について語っている本なので説得力がある。
簡単に言ってしまえばiモードでITインフラを構築したので、次はそれを利用するためにFelicaチップを搭載したケータイにより生活インフラに展開をする、ということである。
使われている図にオリジナルのものが見受けられ新たな気付きがある。

そのためスコアは+1とし、それ以外は期待通りであったためスコアは4としたい。

これからケータイを使ったビジネスに関わろうとする営業系のひとは読んでおいたほうがいいかと思う。
逆に技術的なことを求める人には物足りないと思う。


Docomoの描く未来からケイタイの未来を想像できました ★★☆☆☆
−Docomoの描く将来が分かりやすく描かれていました。
 はじめの一章目の「ケータイの未来 2020」に本書のエキスが凝縮されています。
 私には描かれた未来像は既に実現されているに近いものを感じ、やや期待外れでした。
 その点は著者も認めているところで、曰く「既に実装されている機能で人はほぼ満足しているのだ」と。だから今後は機能よりも形状に進化を見出していきたいと。
−形状の進化に関しては、いくつかアイデアが書かれており、ディスプレーをホログラフィ技術でブレイクさせたいなどが一例です。
iモードしかけ人が立ち上げた新サービスとは何か ★★★★☆
 本書は、iモードしかけ人が目指すケータイの近未来戦略と、遠い未来の予言が両方収められています。

 そうそうたるクリエータを率いて立ち上げる新サービスとは、いったい何か。興味津々で読みはじめましたが、本書の完成に3年もかけているうちに、実は、新サービスはもうスタートしてしまいました。
 答は、おサイフケータイです。

 このおサイフケータイを普及させるための様々な工夫が本書で明かされていますが、ここは割愛。

 もう一つの、ケータイの遠い未来の予言は、興味深いものでした。
 意外にも、著者はケータイが人間の基本的なライフスタイルを変えるとは考えておらず、端末ハードはともかく、携帯電話機の根本機能自体はそう変わらない、と見ています。

 私がとても興味深く感じたのは、夏野氏が読者を納得させる方法です。
 何しろ、iモードが海のものとも山のものとも分からない時期に、あのお堅い銀行関係者を納得させ、iモードスタート時のケータイバンキングの協力を取り付けた夏野氏です。その後、銀行が参加するなら……、とケータイ用サイトを開設してくれる企業が続出したのが、iモード成功の一因になりました。
 正確には覚えていませんが、『iモード事件』(松永真理著)の中に、夏野氏と一緒に銀行関係者と打ち合わせた若手社員が、
  「夏野さんが話すると、催眠術にかかったように相手がウンという」
と報告する場面がありました。

 本書も論旨に無駄がないだけでなく、ある時は数字を用い、ある時は感情に訴える内容で、読んでいると著者といっしょに通信業界の閉鎖性に憤慨している自分に気づいたりしました。

 あれ? 知らないうちに、夏野さんガンバレって応援してるなあ。
 私はウィルコム利用者で、カミさんはauなんだけどなあ。

 説得されていると気づく前に納得していた。
 本書を読んで、そんな体験をお楽しみください。
3年以上をかけて書く内容だろうか ★★☆☆☆
あとがきに完成までに3年以上かかったとある。
本人が携帯電話の世界はドッグイヤーどころではなくマウスイヤーだと言っているのに。

書いてある内容はオペレータとして日本の携帯電話業界を牽引してきた視点からのもので、世界の状況を正確に把握しているとは思えなかった。国内向けの本なのでそのような記述をしているのかとも思ったが、筆者が海外の展示会等で講演するときも同じなので本当にそう思っているのかもしれない。

護送船団方式で守られてきた日本の業界は閉塞感が漂っている(銀行やゼネコンのこと)と言っているが、個人的には日本の携帯電話の世界がまさにそうなのではないかと思う。たとえどんなに技術力がありすばらしい製品を作り出す力があろうとも、マーケット(エンドユーザ)が望むものを提供することができなければ市場では受け入れられない。そのような力はオペレータからの注文を受けて製品を開発する(オペレータからの開発委託:ODM)をしている限り身に付かないだろう。
筆者は日本のケータイは世界で最先端なのだから通信方式が3Gで共通化されたからこそ世界に打って出ていくべきだと言っている(そしてそれは成功するはずだと思っているらしい)。
しかし、日本のケータイは多品種少量生産を目指した開発が進められてきている(成熟産業では当然ではあるが)。ところが世界の携帯電話市場は未だに成長産業なので大量生産が要求される。そして現在世界でトップクラスのシェアを誇る携帯電話メーカーは多品種大量生産を実現している。Nokiaなどは年間50機種以上の新機種を発売し、年間の総生産量は3億台を超える。海外メーカーは大きな都市には自社ブランドのショップを既に構えており、日本メーカーが海外に進出するにはこのようなネットワークを一から構築しなければならない。
良いものを作りさえすれば売れるという考えが間違っていると筆者が自分で書いているのに、日本メーカーの海外進出に関してはなぜか当てはまらないようだ。

日本におけるケータイでのICカード決済を導入するくだりは興味深かった。技術的な問題ではなく、デファクトスタンダードとなる方式を見極めてFeliCaの採用を決めたということらしい。

そういえば「ケータイの未来 2020」という筆者による小説が冒頭にあるが実はこの中のいくつかの機能は海外の携帯電話では利用可能なサービスが含まれている。そう、これは世界の視点で見た携帯電話の未来ではなく日本のケータイの未来なのだ。