この時期は日本にとっての大きな転換期で、それは蒙古が襲来しなくとも成されていたことであり、タイトルとは逆に、元寇の影響など小さかったのではないかというのが私の抱いた印象である。
いずれにしても、義務教育から学んだものとは違う日本の中世像を本書から知ることが出来る。ただし、この著者の他の著作にも言えることだが、読むに当たってはある程度の予備知識が必要である。
蒙古襲来時の執権、時宗は夭折したが、その原因は有力者安達泰盛と平頼綱の対立による心労ともいわれている。時頼の「撫民」政策を強力に推し進めようとした安達泰盛は「弘安の徳政」と呼ばれる政治を行おうとするが、鎌倉武士お得意の内輪もめによって、平頼綱によって滅ぼされ、またその頼綱もヤル気のなさを嫌われて殺されてしまうという血塗られた歴史の中で、得宗独裁が強まる。しかし、それは権力者の弛緩を生み、やがて14代高時で滅亡を迎えることになる。
まさに一篇の叙事詩。