さわやかな温かさ
★★★★☆
個人的に、亡くなった妻を慕っていたガングロのイモちゃんの
働きにいちばん感心してしまいました・・・!
単行本の表紙を読後に改めて見ると、
水色のタイトルロゴと共に、
イモちゃんはじめ他の主な登場人物について、
この物語のさわやかな温かさが感じられました。
「食堂かたつむり」もですが、
良心的な児童書メインのポプラ社さんからの出版なんだ〜と納得。
評判がいい
★★★★☆
この本を手に取った理由は、共産党の小池元議員がツイッターで感想を書いていたのと、図書館等で予約がたくさん付いていたので、良い本だろうという、予測で読んでみました。
心に残ったのは、主人公?の百合子さんが「子どもがいない」という条件のもとで、夫の浮気、離婚、復縁という流れを経験しているところ。子どもがいなくても、よかったと思える人生であるように考えてみる――。そのような一節があったと思うのですが、僕はよくぞ書き入れた一節だと思うし、作者の勇気の一言だと思う。簡単な言葉のようで、文章にするのは難しいと思うのですが、すんなりと入れて、とても心に入る言葉。もちろん、私が少し、同じような状況だからこそ、この一節に深い感動を覚えたのかもしれませんが、作者の心の豊かさ、描出の巧さがそうさせているのでしょう。
ただ、全体的な構成としては、すこぶる心をうつというものではなかったという印象です。だから☆4つです♪ ちょっと雑な部分も垣間見れたし、最後の方の文章は、終わり方に相当苦労したのはと思わせるほど、きれいな文体では書かれていても、心を揺り動かすほどの描出はできていない。
作者の伊吹有喜さんのことを詳しく知らないのですが、おそらく、デビュー本が売れて、すこぶる順調な中で、出版社に後押しされて書き上げた本なのではと感じました。ただ、短期で書き上げたっぽいものにしては、とてもいい内容でしたし、作者の力量の高さを感じます。
とりあえず、伊吹さんのデビュー本を読んでみたいと思います。
極上の催涙小説
★★★★★
とてもウェルメイドな人情話で、涙腺を心地良く刺激してくれます。
まず特筆すべきなのが、的確にして魅力的な人物造形。ちょっとした特徴を簡潔に捉えた描写と、キャラ立ちしつつもナチュラルなセリフ回しで、多彩な登場人物が生き生きと書き分けられています。
それでいて、この種の小説にありがちな「良い人ばかり」状態になっておらず、主人公も含めて、人間らしい、と言いますか、ちょっとドロドロした部分もキッチリ押さえているのが却って爽やかです。
また、物語の中で小道具、特にタイトルにも関連しているのでしょうか、食べ物が実に巧みに活用されていて、乙美さんが熱田氏に出会う場面など、歴史に残る名調子ではないかと。
おとぎ話的なエンディングは好き嫌いが分かれるかもしれませんが、私は素直に落涙しました。
後味の良い泣ける小説を、という方にはお薦めです。
一気に読めてしまう名作
★★★★★
実父の四十九日の前に、ふと手にとってみた一冊。
残された者が日常を取り戻して行くまでの時間を丁寧に描いていました。
亡くなった人の分も精いっぱい生きる元気がもらえました。
読後感の温かなお話です。
★★★★★
最初、登場する人々の「えげつなさ」に辟易しました。人間のドロドロとした、すごく嫌な部分を突きつけられたようで、ダーリン熱田と百合っち親子が痛々しく、胸が苦しくなりました。
そんな中で、金髪ガングロのイモは、明るくお話をグイグイ進めてくれました。
この主役親子の立場が切ないだけに、どうなってしまうんだろう…。と一気に読みました。
結論から言うと、思った通りの結末だったけど、それが「なあんだ」じゃなくて「やっぱり…。良かった」と思える展開で本当に良かった。多分あちこちにある伏線が、この結末を暗示していたからなのかもしれない。
このお話は、49日までの具体的な過ごし方が書いてあって、その通りにする内に立ち直るっていうお話かと思っていたら、全く違っていました。乙美さんの作った、さまざまなレシピ、私も見てみたいと思います。
「乙美」かあさんだから「乙母」と書いて「おつかあ」。そんな呼び方するかな〜?そういうつっこみ所はいくつかなくもないけど、そういう些細なことは「まあいっかあ」と思えるくらい、夢中で読みました。
登場人物の中で、私は「ハルミ」に心惹かれました。でも、ハルミが出てくるなら、もう一人出てきても良いはずなのに…とも思いました。
心に残ったのは、「誰かのテイクオフ・ボードになれたら、忘れられても良い」という乙美の元同僚聡美の言葉。
聡美は生涯独身を貫き、子どもがいない。乙美はおそらく継子の百合子のことを考えて子供を生まなかった。百合子は不妊治療の甲斐もなく子供に恵まれていない。百合子への、「普通に子どもを生み育てた」女達の言動も「イタイ」
対して亜由美は、相手が変わる度にポコポコ妊娠するような女。母親である前にオンナでいたいと言い切る女。
今、望んでも子どもに恵まれない女性は多いし、欲しくないという女性も多い。理由はどうあれ出産しない女性は、死んでしまったら何も残らないとは考えないのかな、と私は少し思っていました。子孫を残したいというのは「本能」だと習ったけど、そうじゃないのかな?と不思議でした。子どもがいないことで私の意見を不愉快に思われた方、いらしたらごめんなさい。あくまでも私の場合は、歴史に名を残すような偉業も成し得ないし、子どもが生まれて、これで生命の鎖をつなげた、とホッとした。それが実感でした。
でも、この聡美の一言は、このお話の中でもすごく重要な位置を占めるような気がしました。子どもがいる人にもいない人にも、すべての人へのメッセージのような気がしました。
テイクオフボードは、つまり跳び箱なんかの「踏み板」のことです。
あなたが、今生きている。それだけで、きっと誰かの踏み板になっている。そう考えると、生きていくのに力が湧いてきませんか?
ほやほやどう☆風海の世界
★★★☆☆
NHKドラマ の小説
奥さま書店
★★★★☆
熱田家の継母 乙母こと乙美が死んだ。落ち込む良平の前に現れたのは、今時パツキン、ガングロのパンダ娘 井本。乙美の生徒だったという井本は、生前乙美に死後四十九日の間、良平のお世話係を任されていた!?
★この本の前に読んだ重松氏「十字架」同様、死んでからその人に思いを馳せる♪ ああ、生きているときに十分感謝してやれよ(笑)。
って、身近な者ほどその人の有難さの上に胡坐をかくのよねぇ~。
私も然りで反省です。
で、乙美が関わった人たちに素敵なことったら♪ガングロ「イモ」、ブラジル青年「ハルミ」外見では判断できない素直さと優しさ。彼らも乙美と接することによって変わったのでしょうね。
最初は真っ白だった乙美の足跡が、様々な思いを抱いた人たちの手により紡がれて、乙美の生きた証となっていく。
タンポポのような人だったんだろうなぁ~♪
私も、誰かしらの中で何時までもとは言わないけれど、思い出されるような人になりたいものです。
余談ですが、私なら浩之と再婚しませんね(笑)