十六個の角砂糖
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雨のバルコニーで紅茶
ふとした瞬間に誰かを思い出し、お茶に誘い出す。
誰にも経験のあることだろう。
電車を降りた男は思い立って女に電話をし、
そして女は自分が出向くのではなく、この家に来いと言う。
そこでふるまわれるのは紅茶だ。しかも、雨が降っているのに
わざわざテーブルに和傘を差し、バルコニーでそれを飲む。
そこには偶然の、ささやかな、しかし確かな時間の輝きがある。
二人はそれを楽しむ。親や家や恋の話をしながら。
さて、この二人の関係は?
それを推測するのが、読書の愉しみというものだろう。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/