美術館で過ごした時間
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美術館が最適
恋人同士、とはどうもいえないようだが、親密な二人だ。
親密であいまいな二人。
彼女が引っ越した新しい部屋、そこからほど近くに美術館があり、
そこがまるで部屋から見て離れのような位置にあり、
あたかも自分だけの美術館のような……という位置の構造が
この短篇小説の構造と二人の距離の精妙さに響き合っている。
いうまでもなく美術館は公共空間だが、
なにしろ「離れ」でもあるのだから、
「悪くない」「なにが?」「こういうの」という言葉へと至る
そんな行為にも似つかわしい場所なのだ。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/